日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG53] Science of slow earthquakes: Toward unified understandings of whole earthquake process

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、氏家 恒太郎(筑波大学生命環境系、共同)、波多野 恭弘(東京大学地震研究所)

[SCG53-P17] 地震波異方性の時空間変化と低周波微動活動:地震波異方性モニタリング解析の多点展開

*石瀬 素子1西田 究1望月 公廣1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:地震波異方性、低周波地震、モニタリング

地震波異方性は,媒質の応力状態や物性,構造と強く関係していることが知られている.したがって,これらの時空間分布を明らかにすることで,地球内部の状態変化が捉えられると期待される.



 そこで,我々は,地震波異方性を通して地球内部の状態変化の検出を行う目的で, S波スプリッティングパラメータ(速いS波の振動方向と分裂したS波の到達時間差)を連続的に測定する地震波異方性モニタリング方法を開発した(石瀬・西田,2015).そして,定常的に状態変化が生じていると考えられる西南日本のスロー地震活動領域に注目して,当該領域におけるHi-netおよびDONET観測点での地震波異方性の時間変化の観測を行ってきた(e.g., Ishise et al., 2017).



 これまでの取り組みから,地震波異方性の時間変化が対象領域近傍における低周波微動活動と強く関係していることが明らかになっている(Ishise et al., 2017).また,モニタリングの一環として行われる入射波のpolarization解析により波の到来方向が見積もられており,おおまかな震源位置が推測できる.したがって,本モニタリング手法を多点に展開し,かつ長期間のデータを解析することで,微動分布の時間発展,構造の時間変化,およびこれらの関連性についての知見が得られると考えられる.



 しかしながら,地震波異方性パラメータを得るのに数多くの演算が必要となる(1観測点の1日分のモニタリングに要する演算数は1千万超).そのため,現行のCPUを用いた計算環境では実時間以上の計算時間がかかってしまい,多点における長期間のデータを用いた地震波異方性モニタリングの実施は困難であった.そこで,GPGPUを活用することで計算時間の短縮化を図った.そして,新たな計算環境の下,地震波異方性モニタリング解析の解析領域および解析期間の拡張を進めている.



 現時点では,四国地方のH-net観測点の約半年分のモニタリング結果を得ている.これらは,これまでと同様,継続時間が長い規模の大きな既知の微動エピソードの時空間発展を非常によく再現しているだけでなく,規模の小さな微動活動も効果的に捕らえている.また,得られた異方性パラメータに注目すると,観測点ごとに特徴的な方位や強さがあることが明らかになった.例えば,愛媛県のHi-net観測点N.SJOHでは,周辺の微動活動と同期して北東—南西,北北西—南南東および西北西—東南東を中心に揺らぐ持つ異方性を示す傾向がある.その強さは,速いS波と遅いS波の到達時間差でみて0.02秒付近で揺らぐ頻度が高い.四国地方の地殻内には,中央構造線の走向と平行な東西方向に卓越した異方性の存在が知られているが(Kaneshima, 1990),本解析で得られている複数の異方性は地殻内の構造だけでは説明しきれない.より深部に位置する微動の震源域の構造の影響が観測されていると考えられる.現在進行中の解析が進展すれば,より多くの観測点における長期間のモニタリング結果がもたらされる.これらと微動活動とあわせて整理することで,異方性の場所や成因の特定や微動活動域の場の理解につながると考えている.