日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 変動帯ダイナミクス

2018年5月23日(水) 09:00 〜 10:30 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)、座長:曽田 祐介高田 陽一郎

10:00 〜 10:15

[SCG57-17] 東北沖地震前後の東北地方における局所的な歪速度について

*稲松 知美1高田 陽一郎1鷺谷 威2西村 卓也3 (1.北海道大学大学院 理学院、2.名古屋大学減災連携研究センター、3.京都大学防災研究所)

キーワード:東北沖地震、GNSS、非弾性歪

2011年3月11日、Mw9.0の東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震と呼ぶ)が発生した。歪集中帯や活断層のM9クラスの地震に対する応答を、密に配置されたGPSの観測データを用いて調べた例は殆どなく、東北沖地震が初めての機会である。本発表ではGNSSデータから求めた東北地方における東北沖地震前・地震後の地殻変動を、跡津川断層近傍の場合(Inamatsu and Takada, JpGU2017)と比較した結果を報告する。
解析には国土地理院のGEONETと跡津川断層近傍に大学が設置したGNSS観測点を用いた。地震間(地震前・地震後) については時系列解析により年周・半年周変動を除去し、速度場を求めた(地震後については2年毎に期間を区切った)。地震時については地震の直前直後6日間ずつの座標平均を計算し、その差から変位を求めた。次にこうして推定した速度と変位から、Shen et al (1996) の手法を用いて歪速度場 (地震時については歪場) を求めた。また、主に東北沖地震の余効変動と粘性緩和に伴う速度場の長波長成分を2次関数を用いたベクトル場でモデル化し、これを除去することで地震前後の歪速度の短波長成分を求めた。
東北沖地震の破壊域から遠い跡津川断層近傍では地震前後の局所的な歪速度場は良く似ている。またこの歪速度場は地震時歪の空間パターンと全く異なるため、地震間の局所的な歪速度は非弾性歪によるものであると分かる。一方で、東北沖地震の破壊域に近い東北地方では地震前後で局所的な歪速度の短波長成分も変化している。そこで非弾性歪速度が絶対差応力に強く依存することから、跡津川と東北地方の違いは地震時の応力変化量によって説明できる可能性がある。すなわち、跡津川断層近傍では地震時の応力変化量が長い時間スケールで蓄積された絶対応力よりも遥かに小さいのに対し、東北地方では匹敵する量となることが原因と考えられる。
我々は東北地方の地殻不均質構造に伴う局所的な歪速度場とその時間変化を詳細に調べ、以下のことを定量的に明らかにした。(1) 地震時に沈降したカルデラ域(Takada and Fukushima, 2013) で局所的な沈降と収縮が継続している。(2) 特に秋田駒ケ岳付近では非常に強いせん断歪が集中している。(3) 地震後は奥羽山脈に沿って周囲に比べて相対的に沈降している領域が那須付近まで連続しているように見える。(4) 以上の局所的な歪速度は全て時間とともに減少する。(3)の東北地方南部から関東地方北部にかけての局所的上下変動については、残念ながらS/Nが低いため、今後一層精度の高い解析を行う必要がある。