13:45 〜 14:00
[SCG57-25] 熊本県,日奈久断層帯に沿った断層活動史
キーワード:熊本県、日奈久断層、活断層、断層岩
日奈久断層帯は北東-南西に約81km延びる活断層帯である.2016年熊本地震では最大の前震(Mw6.2, Apr.14)がこれに沿って発生した.また,白亜紀以降に生じた断層活動を記録し,その理解は2016年の地震活動を考える上でも重要である.そのため我々は,日奈久断層帯の日奈久区間に沿って発達する脆性剪断帯の構造解析を行うとともに,周辺地質構造の形成過程とあわせ,断層活動史を考察した.
宇城市娑婆神峠では,肥後変成岩類の分布域を日奈久断層が通過し,これに沿って脆性剪断帯が発達する(小林・小柏,2017:地質学会).中軸部には幅1mの断層ガウジ帯が形成され,P面の配列などから右横ずれと判断される.一方,中軸部に隣接するカタクレーサイトは左横ずれを示す.
蕨野-出春断層は日奈久断層の東5kmを並走し,ともに日奈久区間を構成する活断層である.肥後変成岩類に左横ずれ隔離を与える白石野断層(斉藤ほか,2010:八代図幅)とほぼ重なる.美里町白石野では,片麻岩と花崗岩の境界に幅1mの断層ガウジ帯が形成されている.北東-南西走向・高角傾斜のY面と,その左横ずれを示唆するT面が発達する.さらに,それらを明瞭に切断して右横ずれに伴うR1-R2面の配列が認められる.
芦北町北部の海岸沿いでは,浅海性下部白亜系の日奈久層が分布し,砂岩泥岩互層中に脆性剪断帯が形成されている(小林・小柏,2017:地質学会).剪断帯の幅は100-150mと見積もられる.Y面の姿勢は北北東-南南西走向・鉛直~高角東傾斜に集中するが,西側では徐々に南北走向へと変化する.主にP-R1-T面の発達したカタクレーサイトが形成され,破砕岩片の粒径が東に向かい減少することから,変形は剪断帯の東縁で最も強いと判断される.また,その東側で非変形の地層と接する.Y面上の条線は南に低~高角で沈下し,右横ずれ~右横ずれ正断層と判断される.σ1:西南西-東北東,σ3:北北西-南南東の横ずれ応力場を示す.
日奈久層とその下位にある下部白亜系には,北東-南西に延びる長大な向斜構造が形成されている(松本・勘米良,1964:日奈久図幅).芦北町付近ではその南東翼が露出し,東傾斜の逆転層と西傾斜の正序層が認められ,両者は向斜軸とは反時計回りに斜交する断層で接している.この地質断層は,日奈久区間の南端部を構成する波田島-外平断層と重なる.また,この断層および海岸沿いの剪断帯の東側に隣接して,ともに東北東-西南西に短く延びる背斜・向斜が形成されている.
今回,日奈久区間の全体が左横ずれから右横ずれに転換したことがより明確になった.左横ずれ運動は右雁行(NNE-SSW)しながら連続する剪断帯で生じ,日奈久断層帯の原型になったと考えられる.この幾何学のもと,日奈久区間と八代海区間の接続はより容易になった可能性がある.その後,応力場は東西圧縮・南北引張へと変化したが(3Ma~?),西側隆起の運動像は現在の地形分布と一致しないため,第四紀前期?までには終了し,その後は東側隆起に転じたと結論される.
宇城市娑婆神峠では,肥後変成岩類の分布域を日奈久断層が通過し,これに沿って脆性剪断帯が発達する(小林・小柏,2017:地質学会).中軸部には幅1mの断層ガウジ帯が形成され,P面の配列などから右横ずれと判断される.一方,中軸部に隣接するカタクレーサイトは左横ずれを示す.
蕨野-出春断層は日奈久断層の東5kmを並走し,ともに日奈久区間を構成する活断層である.肥後変成岩類に左横ずれ隔離を与える白石野断層(斉藤ほか,2010:八代図幅)とほぼ重なる.美里町白石野では,片麻岩と花崗岩の境界に幅1mの断層ガウジ帯が形成されている.北東-南西走向・高角傾斜のY面と,その左横ずれを示唆するT面が発達する.さらに,それらを明瞭に切断して右横ずれに伴うR1-R2面の配列が認められる.
芦北町北部の海岸沿いでは,浅海性下部白亜系の日奈久層が分布し,砂岩泥岩互層中に脆性剪断帯が形成されている(小林・小柏,2017:地質学会).剪断帯の幅は100-150mと見積もられる.Y面の姿勢は北北東-南南西走向・鉛直~高角東傾斜に集中するが,西側では徐々に南北走向へと変化する.主にP-R1-T面の発達したカタクレーサイトが形成され,破砕岩片の粒径が東に向かい減少することから,変形は剪断帯の東縁で最も強いと判断される.また,その東側で非変形の地層と接する.Y面上の条線は南に低~高角で沈下し,右横ずれ~右横ずれ正断層と判断される.σ1:西南西-東北東,σ3:北北西-南南東の横ずれ応力場を示す.
日奈久層とその下位にある下部白亜系には,北東-南西に延びる長大な向斜構造が形成されている(松本・勘米良,1964:日奈久図幅).芦北町付近ではその南東翼が露出し,東傾斜の逆転層と西傾斜の正序層が認められ,両者は向斜軸とは反時計回りに斜交する断層で接している.この地質断層は,日奈久区間の南端部を構成する波田島-外平断層と重なる.また,この断層および海岸沿いの剪断帯の東側に隣接して,ともに東北東-西南西に短く延びる背斜・向斜が形成されている.
今回,日奈久区間の全体が左横ずれから右横ずれに転換したことがより明確になった.左横ずれ運動は右雁行(NNE-SSW)しながら連続する剪断帯で生じ,日奈久断層帯の原型になったと考えられる.この幾何学のもと,日奈久区間と八代海区間の接続はより容易になった可能性がある.その後,応力場は東西圧縮・南北引張へと変化したが(3Ma~?),西側隆起の運動像は現在の地形分布と一致しないため,第四紀前期?までには終了し,その後は東側隆起に転じたと結論される.