[SCG57-P19] 2017 年 7 月 11 日に鹿児島湾で発生した M 5.3 の地震の震源域周辺における震源分布と微細断層構造
キーワード:鹿児島湾の地震、震源再決定、断層構造、空白域、流体
2017 年 7 月 11 日 11:56 (JST) に,鹿児島湾の深さ約 10 km を震源とする MJMA 5.3 の地震が発生した.この地震により,震源に近い鹿児島市では震度 5 強の強い揺れが観測された.
本震震源の周辺では,2016 年 12 月頃を境に地震活動が活発化していたことがわかっている.気象庁一元化震源カタログによると,この前駆的活動及び余震活動の震源分布は,本震の震源からおよそ 5 km の範囲内で雲状に散らばった分布をしており,断層面に相当するような面状構造はみえていない.このように雲状に広がる震源分布は,震源決定誤差に起因する見かけのものかもしれない (e.g. Yoshida & Hasegawa. 2018).一方,この地震活動の発生機構として,単純な流体拡散モデル (Shapiro et al., 1997; Rothert & Shapiro,2003) を考えれば,この雲状に広がる震源分布も説明されるかもしれない.この地震活動の発生機構を理解するためには,詳細な震源分布の情報を得ることが重要である.そこで,本研究では,MJMA 5.3 の地震の前後で発生した地震について,波形相関を用いた精密な震源再決定を行うことにより,詳細な震源分布の特徴を調べた.
まず,気象庁一元化震源カタログに記載されている 2003 年以降に鹿児島湾南部周辺で発生した11,105個の地震を対象にして,波形相関を用いて精密な到達時刻差を求めた.使用した観測点は,震源域を取り囲む20 点である.波形相関には 5-12 Hz のバンドパスフィルターをかけた観測速度波形を用いた.そして,震央間距離が 3km以内の地震ペアについてで,P波とS波到達時刻の0.3s前から始まるそれぞれ 2.5s, 4.0sの長さのwindowを用いて,相互相関関数を計算し,相関係数が 0.8 以上であった場合,到達時刻差を求めた.P, S 波の到達時刻データには,気象庁一元化カタログ記載の値を用いるが,それがない場合には,気象庁による速度構造モデル JMA2001 (上野・他,2002) に基づいて計算した値を用いた.
次に,得られた到達時刻差データを用いて震源の再決定を行った.波形相関を用いて得られた到達時刻差データとカタログ記載の検測値の時刻差データに対し, DD法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002) を適用した.初期震源には,気象庁一元化震源カタログ記載の位置を用いた.震源決定のイタレーションの前半部分では,マニュアル検測値に高い重みをつけることにより大まかな相対震源位置を決め,後半では,マニュアル読み取り誤差の影響を軽減するため,波形相関により得られた時刻差データに高い重みをつけた.
再決定により,雲状にばらついていた震源が,複数枚の面上に集中するようになった.特に,本震発生前に本震震源周辺で活発化した活動の震源は,一枚の面に集中するようになった.この面上には震源の空白域がみられ,本震震源は空白域の端に位置する.余震の震源もまた本震震源を避けるように分布することから,本震の主要なすべり域がこの空白域に対応する可能性がある.
余震の震源もまた複数枚の面状構造を示し,その活動は時間とともに浅部から深部へと移動する傾向がみられた.このような時間・空間分布の特徴は,その発生に流体の関与が指摘されている, 2011 年東北沖地震後の東北地方で発生した群発地震活動の特徴 (Yoshida & Hasegawa, 2018) と似ており,鹿児島湾の地震活動にも流体の深部から浅部への移動が関与した可能性がある.
本震震源の周辺では,2016 年 12 月頃を境に地震活動が活発化していたことがわかっている.気象庁一元化震源カタログによると,この前駆的活動及び余震活動の震源分布は,本震の震源からおよそ 5 km の範囲内で雲状に散らばった分布をしており,断層面に相当するような面状構造はみえていない.このように雲状に広がる震源分布は,震源決定誤差に起因する見かけのものかもしれない (e.g. Yoshida & Hasegawa. 2018).一方,この地震活動の発生機構として,単純な流体拡散モデル (Shapiro et al., 1997; Rothert & Shapiro,2003) を考えれば,この雲状に広がる震源分布も説明されるかもしれない.この地震活動の発生機構を理解するためには,詳細な震源分布の情報を得ることが重要である.そこで,本研究では,MJMA 5.3 の地震の前後で発生した地震について,波形相関を用いた精密な震源再決定を行うことにより,詳細な震源分布の特徴を調べた.
まず,気象庁一元化震源カタログに記載されている 2003 年以降に鹿児島湾南部周辺で発生した11,105個の地震を対象にして,波形相関を用いて精密な到達時刻差を求めた.使用した観測点は,震源域を取り囲む20 点である.波形相関には 5-12 Hz のバンドパスフィルターをかけた観測速度波形を用いた.そして,震央間距離が 3km以内の地震ペアについてで,P波とS波到達時刻の0.3s前から始まるそれぞれ 2.5s, 4.0sの長さのwindowを用いて,相互相関関数を計算し,相関係数が 0.8 以上であった場合,到達時刻差を求めた.P, S 波の到達時刻データには,気象庁一元化カタログ記載の値を用いるが,それがない場合には,気象庁による速度構造モデル JMA2001 (上野・他,2002) に基づいて計算した値を用いた.
次に,得られた到達時刻差データを用いて震源の再決定を行った.波形相関を用いて得られた到達時刻差データとカタログ記載の検測値の時刻差データに対し, DD法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002) を適用した.初期震源には,気象庁一元化震源カタログ記載の位置を用いた.震源決定のイタレーションの前半部分では,マニュアル検測値に高い重みをつけることにより大まかな相対震源位置を決め,後半では,マニュアル読み取り誤差の影響を軽減するため,波形相関により得られた時刻差データに高い重みをつけた.
再決定により,雲状にばらついていた震源が,複数枚の面上に集中するようになった.特に,本震発生前に本震震源周辺で活発化した活動の震源は,一枚の面に集中するようになった.この面上には震源の空白域がみられ,本震震源は空白域の端に位置する.余震の震源もまた本震震源を避けるように分布することから,本震の主要なすべり域がこの空白域に対応する可能性がある.
余震の震源もまた複数枚の面状構造を示し,その活動は時間とともに浅部から深部へと移動する傾向がみられた.このような時間・空間分布の特徴は,その発生に流体の関与が指摘されている, 2011 年東北沖地震後の東北地方で発生した群発地震活動の特徴 (Yoshida & Hasegawa, 2018) と似ており,鹿児島湾の地震活動にも流体の深部から浅部への移動が関与した可能性がある.