日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 沈み込み帯へのインプットを探る:海溝海側で生じる過程の影響

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山野 誠(東京大学地震研究所)、森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、藤江 剛(海洋研究開発機構)

[SCG58-P01] 海洋プレートの沈み込み直前域での改変実態解明に関連する掘削計画の現状と展望

*森下 知晃1山野 誠2藤江 剛3山口 飛鳥4小野 重明3 (1.金沢大学理工研究域自然システム学系、2.東京大学地震研究所、3.海洋研究開発機構、4.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:プレート屈曲断層、海洋プレート改変、海洋プレート加水、北西太平洋域、海洋掘削計画

沈み込み帯でのプレート境界地震,沈み込む海洋プレートを介した物質循環を理解するために本質的に重要なのは,沈み込む海洋プレートの実体を解明することである.近年の海洋研究における最も重要な発見の一つは,プレート沈み込み直前のプレート屈曲域での断層形成とその断層を通じた水循環によるプレートの大規模加水過程である(Grevemeyer et al., 2007 EPSL; Fujie et al., 2013 GRL).そこで,形成年代が古く,冷たい海洋プレートが沈み込む端成分といえる北西太平洋域のプレート屈曲断層掘削計画について国際海洋掘削予備申請案として提出済みである.本申請を提案するためには,研究目的,掘削地点,掘削戦略についてのより踏み込んだ議論が必要である.特に北西太平洋地域では,東北地方太平洋沖地震が発生したため,屈曲断層と加水過程の両方の面で特異な,しかし定期的に起きているであろう超深度加水ステージを経験している可能性が指摘できる.掘削対象地域の微小地震活動,地震波による地下構造推定,熱流量測定などの新しい成果 も蓄積されてきている(Obana et al., 2014 EPS; Yamano et al., 2014 EPSL) . 掘削地点の検討においては,既存の中央海嶺でプレートが形成された構造がもつ方向と現在のプレートが沈み込む海溝の方向とがなす角度の関係による違いが明らかにされつつある.さらに,北西太平洋地域には,日本発のユニークで重要な発見であるプチスポット火山活動が古い海洋プレートの上から報告され(Hirano et al., 2006 Science),プチスポット火山活動に伴う海洋プレートの改変過程についての重要性が指摘されつつある.そのような背景の中,地球深部探査船「ちきゅう」を所有・運用する海洋研究開発機構(JAMSTEC)とJ-DESCとの「ちきゅう」を用いた表層科学掘削プログラム(Chikyu Shallow Core Program: SCORE)が発案され,これらの新しいプログラムを有効利用する掘削提案も申請されている.本発表では,これらの研究進展の関係と今後の展望を紹介する.