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[SCG59-10] 三次元速度構造を用いて再決定したカタログを用いて推定した近畿地方の地震発生層の下限
キーワード:地震発生層下限、近畿地方、D90
1. はじめに
近畿地方には、1995年兵庫県南部地震を起こした野島断層を含む六甲-淡路断層帯をはじめ、活断層が密集している地域である。兵庫県南部地震のような内陸活断層の活動による地震の最大規模の推定には起震時の断層破壊域の最大面積の情報が必要である。断層の長さは地表に現れていることから推定可能であるが、断層の幅については地中に存在するため、反射法探査や地震活動などの観測事実から推定する必要がある。その推定方法の一つとして、微小地震活動から地震発生層の下限を断層破壊域の下限が考えられる。本研究ではその手始めとして、三次元地震波速度構造を用いて震源再決定をすることにより、深さ方向における精度が向上した震源カタログを用いて、近畿地方における地震発生層の下限を推定した。
2. データ・手法
2000年10月~2014年7月に発生した深さ50kmまでに防災科学技術研究所(防災科研)の高感度地震観測網(Hi-net)で捉えられたマグニチュード1.5以上の地震について、Matsubara and Obara (2011)の三次元地震波速度構造を用いて震源再決定を行った。北緯34°~36°、東経136.5°~139°、深さ0~50kmにおいて三次元地震波速度構造が解けている 領域に再決定された地震は14371個であった。
このカタログから、活断層に関連する地震活動として深さ20kmまでと深さ25kmまでのカタログを用いて解析を行った。地震発生層の下限として、地表から数えて微小地震の90%が発生している深さをD90として、地震発生層の下限と考えた。0.1度毎のグリッドにおいて±0.1°(±約10km)の範囲(1辺0.2°の矩形)内に11個以上の地震が発生している場合についてD90を解析した。10個以下の場合は地震活動が低調なため精確なD90は推定できないと考えた。
3. 結果
深さ20kmまでの震源データと深さ25kmまでの震源データを用いた解析では、三重県南部・和歌山県南部において深さ25kmまでのデータを用いるとD90が深くなる結果が得られた。この領域ではフィリピン海プレートが南から沈み込んでいるため、深さ20-25kmにおいてフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動が存在する。しかし、それ以外の地域では、違いが見られなかった。このことから、紀伊半島の南端部を除いた地域では、上盤地殻内の地震活動とフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動を区別できる。
活断層周辺におけるD90では、多くの地域で深さ15kmよりも浅い。特に浅い地域としては、兵庫県から京都府の北部、和歌山県中部から奈良・三重県境付近の中部が挙げられる。ただし、和歌山県については群発地震活動が活発であり、活断層に起因しない地震活動であることから注意が必要である。一方、山崎断層の北東側、琵琶湖、伊勢湾周辺については深さ15-20kmと深いD90が得られた。
兵庫県北中部、琵琶湖南東側、奈良県南部、愛知県中部、富山県中部、志摩半島などでは地震活動が少ないため、D90は推定できなかった。このような地域においては、さらに小さな地震も含めて解析する必要があるが、一方で、Gutenberg-Richter則を満たして全地震を捉えられているかどうかについても確認する必要がある。
4. 議論
三次元地震波速度構造で計算した波線経路に基づく発震機構解と比較を行った。近畿地方ではほぼ全域で東西方向の圧縮(P)軸、南北方向の伸張(T)軸の横ずれ断層型の地震が発生している。D90の変化に伴う発震機構解の変化は見られない。伊勢湾や三河湾の周辺北部においてのみ東北東-西南西のP軸と北北西-南南東のT軸の地震が発生している。軸の方向が傾くが基本的には横ずれ断層型の地震である。
5. 結論
三次元地震波速度構造により際けって良い下震源カタログを用いて、近畿地方の地震発生層の下限としてD90を推定した。近畿地方の活断層に伴う地殻内地震の発生層の下限はほぼ15kmよりも浅く、一部の浅いところでは10km程度であった。一方、琵琶湖や伊勢湾周辺では20km程度まで深い領域も存在した。発震機構解は概ね東西圧縮・南北伸張の横ずれ断層である。伊勢湾周辺では軸がやや西に振れるが横ずれ断層が主体であることに変わりはない。
近畿地方には、1995年兵庫県南部地震を起こした野島断層を含む六甲-淡路断層帯をはじめ、活断層が密集している地域である。兵庫県南部地震のような内陸活断層の活動による地震の最大規模の推定には起震時の断層破壊域の最大面積の情報が必要である。断層の長さは地表に現れていることから推定可能であるが、断層の幅については地中に存在するため、反射法探査や地震活動などの観測事実から推定する必要がある。その推定方法の一つとして、微小地震活動から地震発生層の下限を断層破壊域の下限が考えられる。本研究ではその手始めとして、三次元地震波速度構造を用いて震源再決定をすることにより、深さ方向における精度が向上した震源カタログを用いて、近畿地方における地震発生層の下限を推定した。
2. データ・手法
2000年10月~2014年7月に発生した深さ50kmまでに防災科学技術研究所(防災科研)の高感度地震観測網(Hi-net)で捉えられたマグニチュード1.5以上の地震について、Matsubara and Obara (2011)の三次元地震波速度構造を用いて震源再決定を行った。北緯34°~36°、東経136.5°~139°、深さ0~50kmにおいて三次元地震波速度構造が解けている 領域に再決定された地震は14371個であった。
このカタログから、活断層に関連する地震活動として深さ20kmまでと深さ25kmまでのカタログを用いて解析を行った。地震発生層の下限として、地表から数えて微小地震の90%が発生している深さをD90として、地震発生層の下限と考えた。0.1度毎のグリッドにおいて±0.1°(±約10km)の範囲(1辺0.2°の矩形)内に11個以上の地震が発生している場合についてD90を解析した。10個以下の場合は地震活動が低調なため精確なD90は推定できないと考えた。
3. 結果
深さ20kmまでの震源データと深さ25kmまでの震源データを用いた解析では、三重県南部・和歌山県南部において深さ25kmまでのデータを用いるとD90が深くなる結果が得られた。この領域ではフィリピン海プレートが南から沈み込んでいるため、深さ20-25kmにおいてフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動が存在する。しかし、それ以外の地域では、違いが見られなかった。このことから、紀伊半島の南端部を除いた地域では、上盤地殻内の地震活動とフィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動を区別できる。
活断層周辺におけるD90では、多くの地域で深さ15kmよりも浅い。特に浅い地域としては、兵庫県から京都府の北部、和歌山県中部から奈良・三重県境付近の中部が挙げられる。ただし、和歌山県については群発地震活動が活発であり、活断層に起因しない地震活動であることから注意が必要である。一方、山崎断層の北東側、琵琶湖、伊勢湾周辺については深さ15-20kmと深いD90が得られた。
兵庫県北中部、琵琶湖南東側、奈良県南部、愛知県中部、富山県中部、志摩半島などでは地震活動が少ないため、D90は推定できなかった。このような地域においては、さらに小さな地震も含めて解析する必要があるが、一方で、Gutenberg-Richter則を満たして全地震を捉えられているかどうかについても確認する必要がある。
4. 議論
三次元地震波速度構造で計算した波線経路に基づく発震機構解と比較を行った。近畿地方ではほぼ全域で東西方向の圧縮(P)軸、南北方向の伸張(T)軸の横ずれ断層型の地震が発生している。D90の変化に伴う発震機構解の変化は見られない。伊勢湾や三河湾の周辺北部においてのみ東北東-西南西のP軸と北北西-南南東のT軸の地震が発生している。軸の方向が傾くが基本的には横ずれ断層型の地震である。
5. 結論
三次元地震波速度構造により際けって良い下震源カタログを用いて、近畿地方の地震発生層の下限としてD90を推定した。近畿地方の活断層に伴う地殻内地震の発生層の下限はほぼ15kmよりも浅く、一部の浅いところでは10km程度であった。一方、琵琶湖や伊勢湾周辺では20km程度まで深い領域も存在した。発震機構解は概ね東西圧縮・南北伸張の横ずれ断層である。伊勢湾周辺では軸がやや西に振れるが横ずれ断層が主体であることに変わりはない。