[S-CG60] 岩石・鉱物・資源

[SCG60-01] Ce-perovskiteとNb-perovskiteの単結晶構造解析とXAFS法による局所構造解析

*北原 銀河¹、吉朝 朗¹、徳田 誠¹、鳥羽瀬 翼¹、本宮 秀朋¹、有馬 寛²、杉山 和正² (1.熊本大学、2.東北大学)

キーワード：ペロブスカイト、構造精密化、XAFS、局所構造、放射性元素

ペロブスカイト型化合物ABX₃は、強誘電性や圧電性など様々な物性を発現し、組成・圧力・温度によって対称性が変化し、BX₆八面体により構成されるフレームワークのさまざまな変形が起こる。固溶体においても強誘電性やパラ誘電性、圧電性、超イオン導電性等を発現する。最近では太陽電池の材料としても注目されている。希土類元素や多種の重金属を容易に含有する天然産perovskiteの詳細な構造研究は少ない。本研究では、Russia,Kola Peninsula産Ce-perovskiteとUSA, Arkansas産Nb-perovskiteについての比較研究により、固溶体の構造特性や含有元素の局所構造特性や放射性元素による不規則性の増加等について報告する。JEOL製走査型電子顕微鏡 SEM JSM-7001FとOxford社製エネルギー分散型X線分析装置 EDS INCA SYSTEMを用いた化学組成の分析、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のBL-9CおよびNW10Aを用いたXAFS解析による局所構造や酸化状態の解析、Rigaku XtaLAB Super Novaを用いた単結晶構造の精密化を行った。最終的な単結晶構造解析でのR因子はそれぞれ0.0508と0.0589であった。化学分析と構造解析の結果、Ce-perovskiteは（Ca_0.816 Na_0.077 Ce_0.045 La_0.018 Nd_0.018 Pr_0.005 Ag_0.004 Sm_0.003 Dy_0.002 Tb_0.002 Eu_0.001 Gd_0.001 Pm_0.001 Ho_0.001 Lu_0.001 Sr_0.001）_0.996（Ti_0.942 Fe²⁺_0.007 Fe³⁺_0.013 Nb_0.017 Zn_0.012 Ge_0.007 W_0.003）_1.002 O₃、 空間群Pbnm、 a = 5.41620(3)、 b = 5.48350(3)、 c = 7.70340(5)、Nb-perovskiteは（Ca_0.937 Ce_0.021 Na_0.020 La_0.015 Sr_0.003）_0.996（Ti_0.730 Nb_0.122 Fe³⁺_0.108 Al_0.020 Zr_0.009 V_0.008）_0.997 O₃、空間群Pbnm、a = 5.40260(3)、b = 5.46750(2)、c = 7.67360(3)の直方晶Perovskiteであった。SEM分析ではCOMPO像において同一結晶内での組成のわずかな不均一やドメイン構造が見られた。XAFS解析によるFeのXANESスペクトルの形状から、Ce-perovskiteとNb-perovskiteに含まれるFeの酸化状態が大きく異なることが判明した。どちらのペロブスカイトもAサイト、Bサイトそれぞれのトータルの価数はほぼ2価、4価となっており、サイト間での大きな電荷移動は見られない。AサイトでのNa^＋とREE^３＋の置換とBサイトでのFeとNb^5＋の置換により、サイト内で電荷のバランスが取られている。各サイトのイオンサイズはこれらPerovskite固溶体においてもShannon (1976)のイオン半径を用いて原子間距離の実験値が再現できることが分かった。Beran et al.(1996)によるCaTiO₃の単結晶構造解析結果と比較すると、これら固溶体は非常に大きい温度因子の値をとっている。特にCe-perovskiteは含有放射性元素の影響で特に大きな値を有していると推測できる。Ce-perovskiteではNb-perovskiteと比較して、BサイトでのTi、Zr、NbのK-端XANESが顕著になまっており、含有したアクチノイド元素が放射性崩壊を起こすことで局所的なメタミクト化に対応した不規則化が起こっていると解釈できる。原子間距離や構造歪み量、相転移等についても議論する。