10:15 〜 10:30
[SCG60-06] 南部北上体,人首花崗岩体の地質と岩石
キーワード：人首花崗岩体、北上山地、アダカイト
人首花崗岩体は岩手県の南部に位置し,その岩体は黒雲母のK-Ar年代,ジルコンのU-Pb年代から白亜紀前期のものとされ,分布,産状,岩石学的性質から片田(1974)の北上花崗岩類５帯に属する.また,Tsuchiya et al. (2007)は,人首花崗岩体の一部にアダカイト質花崗岩が含まれることを示した。アダカイトとは海洋地殻の部分溶融(スラブメルティング)によって形成されたと考えられる特殊な化学組成(高 Na2O/K2O, Sr/Y, La/Yb 比, 低 Y, HREE)を持つ岩石のことである.そこで本研究では人首花崗岩体の岩相区分を検討するとともに,岩石化学的特徴を明らかにするために人首花崗岩体での野外での貫入関係の確認や試料採取のほか,岩石記載・モード分析,蛍光X線分析装置による主成分・微量成分の分析,電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)による分析,角閃石の年代測定を行った.
貫入関係,およびモード分析の結果から,人首花崗岩体は花崗閃緑岩～トーナル岩(以下,花崗閃緑岩)によって構成され,一部を花崗閃緑斑岩(以下,斑岩)が貫入している.花崗閃緑岩は斜長石,カリ長石,石英,黒雲母,角閃石からなり,斑岩の斑晶部分は斜長石と角閃石,石基部分は斜長石,カリ長石,石英,黒雲母からなる.また,斑岩には暗色包有物として取り込まれていて,斜長石,角閃石,石英,角閃石からなる石英閃緑岩がある.ここでは3つの岩相に区分した.全岩化学組成については,花崗閃緑岩(SiO2 : 61-68wt.%)に比べて斑岩(SiO2 : 59-63wt.%)は,Na2Oに富み,K2Oに乏しい.微量元素ではSr(>440ppm),Gaに富み,Y(<13ppm),Rb,Pbに乏しいなどアダカイト質岩特有の化学組成を有する.Defant and Drummond(1990)のアダカイト判別図(Sr/Y-Y図)によると,斑岩と花崗閃緑岩の一部はアダカイトの領域を示し,花崗閃緑岩の大半は島弧の安山岩～流紋岩の組成を示す.このことは人首花崗岩体が,中心層はアダカイト質の斑岩からなり,周辺相がSrに乏しいカルクアルカリ質の花崗閃緑岩からなるアダカイト質累帯深成岩体(Tsuchiya et al., 2007)であるということを示していると考えられる.また,細粒閃緑岩(SiO2:51.3wt.%)は高いMg(8.3wt.%),Cr(484ppm),Ni(120ppm)含有量を示し,高Mg安山岩に類似した化学組成を示す.
細粒閃緑岩の角閃石のK-Ar年代は114±5.7Maであった.これは人首花崗岩体で行われていた黒雲母のK-Ar年代の117Ma(河野,植田; 1965),ジルコンのU-Pb年代の113-119Ma(土谷 et al.;2015)の値と誤差の範囲で一致する.また,土谷 et al.(2015)が北上山地全域で行った年代測定の結果から,北上山地のジルコンのU-Pb年代は113-130Maとされた.そのため人首花崗岩体は北上山地の中で最も若い岩体の可能性がある可能性がある.
貫入関係,およびモード分析の結果から,人首花崗岩体は花崗閃緑岩～トーナル岩(以下,花崗閃緑岩)によって構成され,一部を花崗閃緑斑岩(以下,斑岩)が貫入している.花崗閃緑岩は斜長石,カリ長石,石英,黒雲母,角閃石からなり,斑岩の斑晶部分は斜長石と角閃石,石基部分は斜長石,カリ長石,石英,黒雲母からなる.また,斑岩には暗色包有物として取り込まれていて,斜長石,角閃石,石英,角閃石からなる石英閃緑岩がある.ここでは3つの岩相に区分した.全岩化学組成については,花崗閃緑岩(SiO2 : 61-68wt.%)に比べて斑岩(SiO2 : 59-63wt.%)は,Na2Oに富み,K2Oに乏しい.微量元素ではSr(>440ppm),Gaに富み,Y(<13ppm),Rb,Pbに乏しいなどアダカイト質岩特有の化学組成を有する.Defant and Drummond(1990)のアダカイト判別図(Sr/Y-Y図)によると,斑岩と花崗閃緑岩の一部はアダカイトの領域を示し,花崗閃緑岩の大半は島弧の安山岩～流紋岩の組成を示す.このことは人首花崗岩体が,中心層はアダカイト質の斑岩からなり,周辺相がSrに乏しいカルクアルカリ質の花崗閃緑岩からなるアダカイト質累帯深成岩体(Tsuchiya et al., 2007)であるということを示していると考えられる.また,細粒閃緑岩(SiO2:51.3wt.%)は高いMg(8.3wt.%),Cr(484ppm),Ni(120ppm)含有量を示し,高Mg安山岩に類似した化学組成を示す.
細粒閃緑岩の角閃石のK-Ar年代は114±5.7Maであった.これは人首花崗岩体で行われていた黒雲母のK-Ar年代の117Ma(河野,植田; 1965),ジルコンのU-Pb年代の113-119Ma(土谷 et al.;2015)の値と誤差の範囲で一致する.また,土谷 et al.(2015)が北上山地全域で行った年代測定の結果から,北上山地のジルコンのU-Pb年代は113-130Maとされた.そのため人首花崗岩体は北上山地の中で最も若い岩体の可能性がある可能性がある.