日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 海洋底地球科学

2018年5月23日(水) 15:30 〜 17:00 302 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:北田 数也戸塚 修平

15:45 〜 16:00

[SCG61-08] 沖縄トラフ伊是名海穴白嶺鉱床における海中曳航式磁気探査

*本荘 千枝1李 相均2,3淺川 栄一2,3角 知則2,4日野 亮太1 (1.東北大学大学院理学研究科、2.次世代海洋資源調査技術研究組合、3.(株)地球科学総合研究所、4.新日鉄住金エンジニアリング(株))

キーワード:SIP「次世代海洋資源調査技術」、沖縄トラフ伊是名海穴白嶺鉱床、ROVによる海中曳航式磁気探査

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代海洋資源調査技術」の受託研究を行っている次世代海洋資源調査技術研究組合(J-MARES)は、2015年度と2016年度の2度にわたり、沖縄トラフ伊是名海穴白嶺鉱床においてROV「はくよう3000」(深田サルベージ)を用いた海中曳航式による磁気探査を実施した。「北部マウンド」と呼ばれる熱水マウンドを中心とした東西約800 m、南北約500 mの範囲において、北西-南東および東西方向の計7本の測線をとり、磁気センサーの海底からの高度を3~4 mに保ちつつ、三軸フラックスゲート磁力計を用いて磁場三成分を測定した。磁気センサーはROVから曳航索で吊り下げられた曳航体に搭載され、観測中の曳航体の姿勢変化は高精度光ファイバージャイロ(PHINS6000, iXblue)で測定した。測線開始前及び終了後に8の字航行を実施し船体磁気補正に必要なデータを収集した。

2015年度の調査では、曳航体に2台の磁気センサーを搭載し同時計測を行った。船体磁気補正の結果は両センサーとも良好で、船体磁気補正係数は互いに異なるものの、補正後の地球磁場の両者の差は概ね10 nT以下であった。センサーを曳航体に搭載しROVからある程度の距離をおいたことで、船体磁場が比較的小さい好条件での観測が実現したと言える。2016年度の調査では、センサー1台とジャイロとを同じく曳航体に搭載した。船体磁気補正の結果は良好であったが、観測開始から約15分の間のみ、鉛直成分のみが極めて高い不自然な値を示した。観測当日、磁気観測の前に電磁探査が行われており、電磁探査中は曳航体の周囲に巻きつけたコイルに大きな電流が流れていた。電磁探査終了後もまだ微量の電流が流れており、それが作る磁場であったと推測される。観測開始15分後以降は通常値となり、2015年度調査の結果とも整合的な、良好な地磁気三成分異常分布を得ることができた。

両航海で得られた地磁気三成分異常を用いて磁気インバージョンを行い、海底の磁化強度分布を算出した。北部マウンドより北西側は比較的変化が少ないが、東側および南側では、海底地形の凹凸とは必ずしも対応しない、複雑な強度分布が認められた。中でも目立つのが、北部マウンド脇から南東に伸びる高磁化域である。本範囲は、2014年に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がAUVを用い高度70 mで行った磁気観測で検出された高磁化域のひとつに相当する。本ROV調査による結果は、観測をより海底近くで行っていることを反映して、先のAUV調査で得られたものと比較するとより詳細である。具体的には、AUV調査で検出されていた楕円型の高磁化域のうち、より東寄りの、カルデラ壁直下付近に最も磁化の強い場所があることが判った。先行研究により、白嶺鉱床の高磁化は、鉱床に含まれる磁硫鉄鉱によるものであることが示されている。カルデラ壁寄りの高磁化は、カルデラ壁の崩壊によって埋積された鉱化帯で、海水による酸化を免れた磁硫鉄鉱による可能性がある。既往のAUV磁気観測と本研究の結果を鑑みるとAUVを用いて比較的高所からの広範囲の調査を実施した後、異常の認められた箇所をROVでより詳細に調べるという調査手法は、両調査の特長を生かした効率的な方策と思われる。

J-MARESは本調査域において反射法地震探査を実施している。本発表では上述の磁気調査結果を反射法地震探査の断面図とも比較し議論する。

(謝辞)本研究は、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代海洋資源調査技術」(管理法人:JAMSTEC)のもと、地球科学総合研究所と東北大学の共同研究によって実施された。