11:45 〜 12:00
[SCG61-23] 琉球海溝南端部におけるGNSS/音響観測
―プレート境界の固着状態の解明に向けて―
キーワード:八重山津波、琉球海溝、GNSS/音響観測、海底地殻変動、プレート間カップリング
本発表では、2014年10月から2017年6月にかけて計4回行われた、八重山諸島の波照間島南沖での海底地殻変動観測の結果を示す。
八重山諸島の南側では、フィリピン海プレートが琉球海溝に沿ってユーラシアプレートの下に約8cm/yrの速度で沈み込んでいる。八重山諸島の北側では、沖縄トラフが約4-5cm/yrの速度で背弧拡大しており、フィリピン海プレートとユーラシアプレート間の収束速度は約12.5cm/yrと推定されている。琉球海溝はプレート間のカップリングが弱く、大地震は起きないと考えられてきた(Scholz and Campos, 2012, JGR)。しかし、1771年4月24日に八重山地震が発生し、石垣島、宮古島を始めとした周辺の島々に巨大な津波が襲来したことが知られている(Nakamura, 2009, GRL)。Nakamura (2009, GRL)では、八重山地震はプレート境界で発生したMw8.0の津波地震と推定されている。しかし、石垣島での津波堆積物のトレンチ調査により、八重山地震が激しい地震動を伴った巨大地震であったこと、また1771年に襲来した津波とほぼ同規模の津波が過去2000年間に約600年間隔で4回起きていたことが推定されている(Ando et al., 2018, Tectonophysics)。
Nakamura (2009, GRL)で推定された震源域において、プレート境界の固着の有無を推定するために、2014年10月に静岡大学及び琉球大学によって、波照間島南沖約40kmの水深約3300mの前弧域に海底局が設置された。本研究では、2014年10月から2017年6月にかけて計4回行われた観測データから、3年間の海底局の移動を推定した。
海底局の位置決定は、キネマティックGPSデータ、船の姿勢データ、音波の走時データ、XCTDデータを使用して、Ikuta et al. (2008, JGR)の手法を用いて行った。キネマティックGPSデータの解析には、NASA/GSFCで開発された長基線解析ソフトウェアIT(Interferometry Trajectory)を使用した。海底局位置は、音速構造が時間的に滑らかに変化すると仮定し、罰則付き最小二乗法により解いた。音速構造の時間的滑らかさの制約の度合いを決めるハイパーパラメータの最適値は、ABIC(赤池ベイズ情報量規準)を基に決定した。また、全観測期間において3つの海底局の相対位置が変化しないと仮定して、3つの海底局の重心の移動を推定した(方法はChen, Kohmi et al. (2018, GRL)に詳報)。
その結果、海底局の重心の変位速度は南方向に11.2±2.4cm/yr(ユーラシアプレート基準)であることが推定された。海底局の40km程北に位置する波照間島の電子基準点の南方向の変位速度は、ユーラシアプレートに対して約5cm/yrであり、海底局が波照間島よりも大きく南方向にせり出していることが推定された。このことから、海底局の直下のプレート境界には固着が無く、さらに、海底局周辺の前弧海盆は海溝直交方向に伸張場になっていることが推定される。
ただし、本結果は4回の観測の結果であるので、ベクトルの精度を上げるために今後も観測を行う必要がある。また、今回変位速度を推定した海底局は、海溝軸から北に約40km、及び想定震源域の西端の場所に位置している。したがって、プレート境界の浅部のみに固着がある可能性や、想定震源域の西部以外の領域で固着がある可能性を否定することはできない。
八重山諸島の南側では、フィリピン海プレートが琉球海溝に沿ってユーラシアプレートの下に約8cm/yrの速度で沈み込んでいる。八重山諸島の北側では、沖縄トラフが約4-5cm/yrの速度で背弧拡大しており、フィリピン海プレートとユーラシアプレート間の収束速度は約12.5cm/yrと推定されている。琉球海溝はプレート間のカップリングが弱く、大地震は起きないと考えられてきた(Scholz and Campos, 2012, JGR)。しかし、1771年4月24日に八重山地震が発生し、石垣島、宮古島を始めとした周辺の島々に巨大な津波が襲来したことが知られている(Nakamura, 2009, GRL)。Nakamura (2009, GRL)では、八重山地震はプレート境界で発生したMw8.0の津波地震と推定されている。しかし、石垣島での津波堆積物のトレンチ調査により、八重山地震が激しい地震動を伴った巨大地震であったこと、また1771年に襲来した津波とほぼ同規模の津波が過去2000年間に約600年間隔で4回起きていたことが推定されている(Ando et al., 2018, Tectonophysics)。
Nakamura (2009, GRL)で推定された震源域において、プレート境界の固着の有無を推定するために、2014年10月に静岡大学及び琉球大学によって、波照間島南沖約40kmの水深約3300mの前弧域に海底局が設置された。本研究では、2014年10月から2017年6月にかけて計4回行われた観測データから、3年間の海底局の移動を推定した。
海底局の位置決定は、キネマティックGPSデータ、船の姿勢データ、音波の走時データ、XCTDデータを使用して、Ikuta et al. (2008, JGR)の手法を用いて行った。キネマティックGPSデータの解析には、NASA/GSFCで開発された長基線解析ソフトウェアIT(Interferometry Trajectory)を使用した。海底局位置は、音速構造が時間的に滑らかに変化すると仮定し、罰則付き最小二乗法により解いた。音速構造の時間的滑らかさの制約の度合いを決めるハイパーパラメータの最適値は、ABIC(赤池ベイズ情報量規準)を基に決定した。また、全観測期間において3つの海底局の相対位置が変化しないと仮定して、3つの海底局の重心の移動を推定した(方法はChen, Kohmi et al. (2018, GRL)に詳報)。
その結果、海底局の重心の変位速度は南方向に11.2±2.4cm/yr(ユーラシアプレート基準)であることが推定された。海底局の40km程北に位置する波照間島の電子基準点の南方向の変位速度は、ユーラシアプレートに対して約5cm/yrであり、海底局が波照間島よりも大きく南方向にせり出していることが推定された。このことから、海底局の直下のプレート境界には固着が無く、さらに、海底局周辺の前弧海盆は海溝直交方向に伸張場になっていることが推定される。
ただし、本結果は4回の観測の結果であるので、ベクトルの精度を上げるために今後も観測を行う必要がある。また、今回変位速度を推定した海底局は、海溝軸から北に約40km、及び想定震源域の西端の場所に位置している。したがって、プレート境界の浅部のみに固着がある可能性や、想定震源域の西部以外の領域で固着がある可能性を否定することはできない。