日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 海洋底地球科学

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG61-P09] 北部沖縄トラフ陸棚斜面下の堆積盆分布とその特徴

*岡田 千明1西澤 あずさ1金田 謙太郎1及川 光弘1堀内 大嗣1藤岡 ゆかり1荒井 晃作2 (1.海上保安庁海洋情報部、2.産業技術総合研究所地質情報研究部門)

キーワード:沖縄トラフ、リフティング、堆積構造、マルチチャンネル反射法地震探査

沖縄トラフは、南西諸島(琉球弧)の島弧―海溝系の背弧海盆にあたり、九州の南西沖から台湾の北側まで北東―南西方向に分布している。ここでは、フィリピン海プレートの沈み込みに伴うリフティングが現在も進行中であり、大陸地殻が薄化しつつあると考えられている。東シナ海の地質構造は、北東―南西方向に広がる堆積盆と隆起帯が交互に存在する構造区分がなされており、東シナ海陸棚から南西諸島海溝に向かってリフティングの活動時期が新しくなっている。沖縄トラフ全体におけるリフティングは2期に分けられており、第2期の活動位置が現在の沖縄トラフであるが、第1期リフティングは東シナ海陸棚から沖縄トラフ西縁にかけての陸棚斜面下で起きていたと推定されている。以前活動していた堆積盆の活動様式を知ることは、現在の沖縄トラフ周辺のテクトニクスをより深く理解する上でも重要である。
本発表では、海上保安庁が沖縄トラフで実施したマルチチャネル反射法地震(Multi-Channel Seismic : MCS)探査のうち、トラフ北部においてトラフの伸長方向とほぼ直交する北西―南東方向3測線の記録の対比を行い、陸棚斜面下に分布する堆積盆と隆起帯の形状や発達史に関する議論を行う。
3測線に共通の特徴として、陸棚斜面下では北西落ちの正断層に伴って形成された大規模なハーフグラーベンが確認された。各測線では、斜面下で2つまたは3つのグラーベンが存在していることが反射断面から確認できた。グラーベンを埋める堆積層は非常に厚く5~8 kmに達し、その堆積層内では少なくとも2枚の強反射面で特徴付けられる不整合が認められた。この堆積盆は、木村(1990)における「陸棚前縁堆積盆」に相当すると考えられ、沖縄トラフ北西端部においてもグラーベンを形成する堆積盆が存在することが判明した。
調査海域の南北でこの堆積盆の特徴を比較すると、北側の測線では斜面下の堆積盆の個数も少なく堆積盆底が深い傾向にある。一方、南側の測線では、グラーベンの落ちが小さく個数も多い。これは、沖縄トラフ北西端部ではより局所的に強い引張応力が働いた可能性を示唆している。
グラーベンを埋める堆積層に変位を及ぼす正断層も多数確認されたが、これらの多くが海底面付近まで変位を及ぼしていない。一方で、現在のトラフ中央部付近では、正断層による変位が最表層まで続いていることが分かる。すなわち、陸棚斜面下のグラーベンの活動そのものが古く、現在の活動度は高くないと考えられる。
隆起帯については、陸棚斜面下の北西側、東シナ海陸棚の東縁下に五島-尖閣隆起帯に対応する基盤の上昇が全測線で明瞭に確認できた。この音響基盤の上面は、大小の凸凹が認められ明瞭な不整合面を形成している。その不整合面は、層厚約1 kmの水平な堆積層に覆われている。また、陸棚前縁堆積盆の南東側、トラフ西縁付近において、グラーベンを形成する沈降に取り残されるように音響基盤が相対的に隆起しているものもいくつか確認された。トラフ西縁部に沿って南北方向に発達する隆起帯に関しては、3本の反射断面のみからは連続性を判断するのは難しい。沖縄トラフと陸棚前縁堆積盆を区分する隆起帯がどこにあたるのかは、今後さらに検討が必要である。