日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] 地殻流体と地殻変動

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、梅田 浩司(弘前大学大学院理工学研究科)、松本 則夫(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ、共同)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)

[SCG62-P02] 岐阜県東濃地域で観測された水圧地震応答と応力地震動との関連性について

*浅井 康広1石井 紘1村上 理1 (1.公益財団法人 地震予知総合研究振興会 東濃地震科学研究所)

キーワード:水圧地震応答、応力地震動

東濃地震科学研究所(TRIES)は、岐阜県東濃地域(瑞浪市)にある瑞浪超深地層研究所立坑内の深度200mボーリング横坑(換気立坑側)に18m孔を掘削、孔底付近にTRIESが開発したボアホール応力計(Ishii and Asai, 2015; EPS)を埋設・設置し、2015年8月末から土岐花崗岩中での応力連続観測を行っている(20Hzサンプリング;STG200N観測点)。ボアホール応力計はHSR-1(N189°E)、HSR-2(N279°E)、HSR-3(N324°E)、HSR-4(N52°E)の水平応力計4成分とVSR(鉛直成分)、IC温度計、方位計から構成されている。また同孔では、孔口を密閉し孔内の水圧観測(20Hzサンプリング;主に深度8.10m~8.30mにある帯水層中の間隙水圧)を2015年12月末より行っている。観測開始から2017年8月1日までに応力地震動に伴う指数関数的な水圧上昇と変化のピーク以後の減少(以後、水圧地震応答と略)が次の6地震の応力地震波形(以下、応力地震動)に伴って観測された。

(1)2016年4月1日三重県南東沖の地震(M6.5)、(2)2016年4月16日2016年熊本地震(M7.3)、(3)2016年10月21日鳥取県中部の地震(M6.6)、(4)2016年11月22日福島県沖の地震(M7.4)、(5)2017年5月10日岐阜県美濃東部の地震(M3.9)、(6)2017年6月25日長野県南部の地震(M5.6)。水圧地震応答はこれらの応力地震動の継続中に始まっている。

 応力地震動の全振幅と間隙水圧地震応答のピーク時変化量との関連性を調査する目的で次の解析を行った。
応力計記録から[第1不変量]=[HSR-1]+[HSR-2]+[VSR]の時系列から応力地震動全振幅を求める。 水圧地震応答のピーク時変化量(水圧上昇量)を求める。 応力地震動全振幅と水圧地震応答のピーク時変化量との比較を行う。
比較解析の結果、応力地震動全振幅と水圧地震応答のピーク時変化量には正の相関があることがわかった。一方、2016年4月14日熊本地震前震(M6.5)や4月25日愛知県東部の地震(M4.2)時にはそれぞれ全振幅1.478kPaおよび1.397kPaの応力地震動が記録されているが水圧地震応答は生じていない。観測された最小水圧地震応答は応力地震動全振幅1.480kPaで生じていることから、1.480kPaから1.478kPaの間にSTG200Nにおける水圧地震応答を生じさせる応力地震動全振幅の閾値の存在が示唆される。この閾値の存在範囲については観測事例を増やし評価を行う(浅井・他, 2017)。

報告では、STG200N観測点から1.5km北西に位置する正馬様観測点SBS105孔で観測された応力地震動と水位地震応答のピーク時変化量との関連性について併せ報告し、岐阜県東濃地域で観測される水圧/水位地震応答と応力地震動との関連について考察する。