日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] 地殻流体と地殻変動

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小泉 尚嗣(滋賀県立大学環境科学部)、梅田 浩司(弘前大学大学院理工学研究科)、松本 則夫(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ、共同)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)

[SCG62-P03] 神奈川県真鶴港の潮位変化による真鶴観測井の水位応答について

*李 楊1鵜川 元雄1板寺 一洋2原田 昌武2 (1.日本大学、2.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:潮汐応答、地下水位変化、水理パラメータ

神奈川県温泉地学研究所は神奈川県西部の真鶴半島に設置した深度500mの真鶴観測井で水位を観測している。また真鶴観測井から約900m離れた真鶴港において潮位観測を実施している。両観測点とも水位データは圧力式水位計により1mmの精度で測定され、1Hzサンプリングで連続的に記録されている。
 真鶴観測井の水位は真鶴港の潮位と強い相関が見られる。本研究では、真鶴観測井の水位データと真鶴港の潮位データを用いて、真鶴港の潮位に対する真鶴観測井の水位の応答について解析を行った。解析したデータ期間は2011年3月1日から3月7日までと2011年3月11日から3月16日までである。特に注目したのは、海洋潮汐による1日及び半日周期の変動に対する応答と2011年東北地方太平洋沖地震による津波による潮位変化に対する応答である。
 3月1日から3月7日までの期間のデータについて、潮汐による応答を詳しく調べるため、スペクトル解析を行った。スペクトル解析では、真鶴観測井の水位は12.14時間(0.00002288Hz)と24.28時間(0.00001144Hz)周期のスペクトル強度が高いことが分かった。同じ周期のスペクトルピークが真鶴港の潮位にも見られることから、1日周期及び半日周期の海洋潮汐による水位変化により真鶴観測井の水位が変化したと考えられる。真鶴観測井の地下水位と真鶴港の潮位のスペクトル強度の比は、24.28時間周期は0.78であり、12.14時間周期は0.72であった。またそれぞれの位相差として0.193ラジアン(44.7分に相等)と0.276ラジアン(32分)の遅れ(真鶴港に対する真鶴観測井の遅れ)である。
 3月11日から3月16日の間では、2011年東北地方太平洋沖地震による津波が真鶴港で観測された。その津波による応答と考えられる水位変化が真鶴観測井にもみられた。津波のスペクトルピークが周期1.16時間を中心に両データに現れた。その主要なスペクトルピークの比は0.44から0.48の範囲である。位相差は0.22から0.24ラジアン(2から3分に相当)である。なお12時間と24時間の潮汐に対する応答は、3月1日から3月7日までの結果と同じであった。
 Turcotte&Schubert(2014:Geodynamics)は一つの帯水層においての水位の周期変化を水理パラメータと関連させてモデル化し、水位の周期変動と水位パラメータとの関係を導き出している。水理パラメータCxを以下の式で定義する。
                     Cx=xΦ/Kh0
 ここに、xは二つ観測井の距離、Φは帯水層の間隙率、Kは帯水層の透水係数、h0は帯水層の底からの水位である。本研究で明らかになった潮位のスペクトルの振幅比から算出した水理パラメータは1.55時間(12時間周期)で1.88時間(24時間周期)である。