日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻、共同)、田阪 美樹(島根大学)、座長:桑野 修(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[SCG63-07] 微細結晶粒氷のクリープ変形における結晶粒径と含有不純物の影響

*猿谷 友孝1中島 甲葵1高田 守昌1本間 智之1東 信彦1東 久美子2,3 (1.長岡技術科学大学、2.国立極地研究所、3.総合研究大学院大学)

キーワード:氷床流動、変形メカニズム、結晶粒径

グリーンランド氷床の変動は全球規模の気候変動や海水面上昇において重要な役割を持っている。氷床流動は大きな時空間スケールの現象であるが,その挙動は氷床を構成する多結晶氷のマイクロスケールの物理現象によって支配されていることが,近年の詳細な氷床コア分析によってわかってきた。
 粒径が大きく単純な構造の多結晶氷の流動則は室内実験によって理解されてきたが,氷床氷の結晶組織は降雪時の環境と密接に関係しているため,実際の氷床氷は様々な要因によって複雑化されている。完新世と比べて高濃度の不純物を含む氷期の氷は結晶粒径が小さく,変形が速いことが知られている(Paterson, 1991)。多結晶氷における固体微粒子の役割についてはこれまでも議論されてきたが(Hooke et al., 1972, Song et al., 2008),力学特性や結晶組織変化への影響については未解明な点が多く残されている。また,結晶粒界や拡散が変形に与える影響がこれまで考えられていたよりも大きいことが明らかになっており,これらの影響を考慮した氷床流動則の再構築が求められている。
 我々は多結晶氷の力学特性・結晶組織と固体微粒子の関連性について調べるためにシリカ粒子(直径0.3µm,含有濃度0.1wt.%,0.01wt.%)を添加した人工氷を用いた塑性変形実験・組織観察を行ってきた。特に非常に遅い歪速度の氷床氷における変形メカニズムを再現するために,微細結晶粒氷を用いている。様々な温度応力条件の下で行った実験の結果,1)シリカ粒子はピン止め効果によって結晶粒成長を抑制すること,2)変形速度に粒径依存性があること,3)シリカ粒子の有無に関わらず応力指数がn~2になることがわかった。
 本実験で得られた歪速度の粒径依存性や応力指数n~2は,従来の氷床流動モデルで用いられているn~3の転位クリープでは考慮されていない結晶粒界の役割が非常に重要であることを示している。本発表では力学試験と結晶組織観察で得られた結果から,固体微粒子や結晶粒界が多結晶氷の変形特性に与える影響について議論する。