日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG64] 脆性延性境界と超臨界地殻流体:島弧地殻エネルギー

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)、小川 康雄(東京工業大学理学院火山流体研究センター)

[SCG64-P03] 超臨界および亜臨界状態での減圧岩石破砕

*高木 健太1平野 伸夫1土屋 範芳1 (1.東北大学大学院環境科学研究科)

キーワード:減圧破砕、超臨界、地熱

水の相変化(液体から気体)により生じる熱応力が引張き裂を発生させることが分かっており,このことを利用した減圧破砕による地熱掘削が考えられている(Tsuchiya et al., 2012).そこで本研究では,オートクレーブ内に水とともに封入した花崗岩試料を温度500, 550, 600°C, 圧力4-50MPaまで加熱し,そこから大気圧まで急減圧を行うことで減圧破砕の有効性について検討した.
急減圧後の試料表面付近の温度低下量(ΔT)は圧力が高いほど大きくなったが,これは圧力が高いほどオートクレーブ内に封入した水の量が多く減圧に伴う相変化の際により大きな潜熱が発生したためだと考えられる.また20MPa以下の低圧条件下ではオートクレーブ内の水は蒸気として存在しているが,減圧により70°C以上の温度低下が生じた.
実験後の試料の空隙率は,ΔTと減圧開始温度に依存しており,ΔTと減圧開始温度が大きくなるほど空隙率が上昇する.また,減圧開始温度が550°Cから600°Cにかけて空隙率の大きな上昇が観察された.加えて,加熱後に急減圧を行わず,自然冷却を行った試料についてもある程度の空隙率の上昇が観察されたことから,花崗岩の主成分である石英のα-β転移温度(573 °C)以上では,この転移が空隙率上昇の主な原因だと考えられる(Ohno, 1995).しかし,減圧開始温度・ΔTにかかわらずほとんどの試料で自然冷却したものよりも急減圧による急冷を受けた試料の空隙率の方が増加する傾向があった.これは,空隙の成因となるき裂の発生は,温度変化の時間率が影響しているためだと考えられる.また,特に水蒸気環境下である圧力4MPaから大気圧へ減圧した試料についても,自然冷却した場合よりも多くのき裂生成が観察された.このことから,地熱貯留層内の圧力条件から大気圧まで完全に減圧することができなくても,数MPaの急減圧によりき裂生成に十分な急冷却が生じると考えられる.

Tsuchiya, N., Yamamoto, K., & Hirano, N. (2012). Experimental approach for decompression drilling in high temperature geothermal conditions. Geothermal Resources Council Transactions, 36, 561-564.
Ohno, I. (1995). Temperature variation of elastic properties of α-quartz up to the α-β transition. Journal of Physics of the Earth, 43(2), 157-169.