日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG64] 脆性延性境界と超臨界地殻流体:島弧地殻エネルギー

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:土屋 範芳(東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻)、浅沼 宏(産業技術総合研究所・再生可能エネルギー研究センター)、小川 康雄(東京工業大学理学院火山流体研究センター)

[SCG64-P04] 八幡平西部地域における地熱活動の地表探査および地下探査情報の統合化

*岡野 広樹1土屋 範芳1平野 伸夫1小川 康雄2國軒 曾2 (1.東北大学環境科学研究科、2.東京工業大学理学院火山流体研究センター)

キーワード:地熱、地熱探査、熱発光

熱発光探査法は地表の地熱兆候を観測するための新たな探査手法として期待され開発がすすめられている。しかし、熱発光探査法によって得られる地表の地熱兆候と、既存の探査法によって得られる地熱構造との関係性が十分に理解できていない。本研究では熱発光探査法と既存の地熱探査法によって得られる情報を、地理情報システムを用いて統合し、それらの関係性について検証する。

本研究では、八幡平西部地域、焼山南部に位置する玉川流域において地表踏査による地質調査および試料採取を行った。試料は主に川沿いの露頭から流紋岩凝灰岩を採取した。試料から石英粒子を手選し、熱発光測定によって地表の地熱兆候を調査し、同時に試料中の変質鉱物の同定も行った。さらに、既存の坑井探査および電磁気探査情報を解析し焼山地下の地熱構造を推定した。

熱発光測定で得られたグローカーブでは200-390℃において発光が観測され、複数のピークを持つと考えられる。そこで、グローカーブの200-390℃における積分強度を用いて評価を行う。地表踏査では玉川上流部に温泉の噴出が確認され、熱発光測定では温泉噴出地点を境に上流で熱発光強度が減少するなど、地熱兆候が観測された。また変質鉱物同定では、下流から沸石類の累帯構造が見られ、温泉噴出地点周辺においてローモンタイトが産出していた。

既存の地下探査情報により、焼山地下は盆状構造をなしており、山体を形成する新期火山岩類の下にはシルト岩および礫岩からなる湖沼堆積物層が形成されていることが分かった。さらに坑井の変質鉱物分布により、湖沼堆積物層がモンモリロナイト変質を受けていることが分かった。

電磁気探査によって得られた比抵抗分布図では、焼山中央地下3~5kmに熱源とみられる低比抵抗帯が確認された。さらに地下500m程では湖沼堆積物層と重なるように低比抵抗帯が分布していることも確認された。
上記の探査情報をGIS上で統合することにより、焼山地下の地熱構造を推定した。モンモリロナイト変質を受けた湖沼堆積物層は不透水層としてキャップロック構造を形成し、比抵抗分布図においても低比抵抗帯として観測された。湖沼堆積物層によって上昇を阻まれた熱水は焼山中央から東方に移動し玉川上流の地表に噴出する。この熱水による地表の地熱兆候が熱発光探査や変質鉱物調査において観測された。以上のような探査情報の統合によって、熱発光探査法は地下の地熱構造からもたらされる地表の地熱兆候をとらえることができ、地熱探査法として有用であると結論づけられる。

文献
Tsuchiya, N., Suzuki, T., Nakatsuka, K., (2000). Thermoluminescence as a new research tool for the evaluation of geothermal activity of the Kakkonda geothermal system, northeast Japan. Geothermics, 29, 27-50



Takeno, N., Noda, T., (1987). Alteration of the core samples from the geothermal exploration wells in the Sengan geothermal area, northeast Japan. Geological Survey of Japan, No.266, 223-247.