11:00 〜 11:15
[SCG65-08] 高密度アレイ観測のための自動震源決定システムの開発(その1)
キーワード:満点計画、自動震源決定、ノイズ除去
1.はじめに 飯尾(2011) は、内陸地震の震源断層を明確に捉えるには、万点規模の地震観測点を設置する必要があると指摘している。近年、地震観測は、年々大規模になり、0.1満点規模の地震観測(松本2015)が行われるようになった。データ解析では、先ず、P波、S波到着時刻の読み取り、震源決定を行うことが必要になるが、人間による読み取りは負荷が大きく困難で、高精度自動読み取りシステムが必要になる。大規模地震観測は、新しい発見を生み出すものと期待されるが、そのためには、高度な解析に耐え得る自動処理システムの開発が必要がある。本発表では,大規模地震観測のための高精度自動読み取りシステムの開発を行ったので報告する.
2.地震とノイズとの識別 0.1満点地震観測計画では、鳥取の約30km四方の範囲に、約800点の地震計を設置している。本発表では、この観測データを用いさせて頂き、開発を行った。満点計画では、狭い領域に多数の観測点を設置することから、全ての観測点をノイズが小さい場所に設置することは難しく、人工的ノイズレベルが大きい観測点も含まれる。このため、数10点以上の観測点で、人工的ノイズや、観測網の外側で発生した小さな地震のP波と、そのコーダを、P波、S波として読み取り、誤った震源を決定する場合があった。そこで、間違って震源決定している地震を除去するための検討を行った。
観測点毎に、P波、S波到着時刻からorigin timeを求め、その標準誤差の分布を調べた結果、ノイズや、観測網から離れた地震の到着時刻を読み取った場合には、標準誤差が0.5秒以上であるが、観測網の内部や近傍の地震の場合には、大部分が0.2秒程度以下であることが示された。そこで、標準誤差が0.5秒以上はノイズであるという判定を加えることにした。この判定により、間違って震源決定される割合は、1%程度以下になった。
3.P波極性の読み取り手法の改良 大規模観測では、詳細な応力場を求めることが、大きな研究目的の一つになっている。このため、P波極性を正確に、かつ、できるだけ多く読み取るための開発を行うことが重要である。極性読み取りには、上下動成分の、1)cut off 周波数が2Hz、2次の高域フィルターを通した波形、2)10次のARフィルターの出力に、1次の低域フィルターを通した波形、を用いた。極性読み取りは、この2種類の波形のどちらかで読み取れた場合に採用するようにした。極性読み取りには、1)P波到着時刻前後のS/N比、2)最初のピーク振幅とノイズ振幅との比、3)P波到着前に、最初のピークとは逆向きの振幅の最大値、4)P波到着時刻から、最初のピークとなる時刻の区間で、最初のピークと逆向きの最大振幅、5)P波到着から1秒間の最大振幅、をパラメータとして用いた。パラメータの設定は、初期設定で極性が読み取れなかったもの、極性を間違って読み取ったものを手動で調べ、どのパラメータが原因で、読み取れなかったか、あるいは、間違って読み取ったかを調べ、経験的に設定するようにした。このチューニングにより、極性読み取り数は、約50%増加した。
4.P波、S波到着時刻データの読み取りと今後の課題 5カ月間の連続波形を用いた場合に、観測網の内部や近傍に震源決定数された地震数は、1200個で、P波、S波の自動読み取り数は、408,000個、411,000個で、平均的走時残差はそれぞれ、0.089秒,0.079秒であった。極性読み取り数は、124,000個であった。自動読み取りの誤差を手動で調べた結果、P波到着直前の0.1-0.3秒の区間で、ノイズ振幅が偶然に大きくなる場合に、ノイズをP波として読み取る場合があることが示された。この程度の誤差は、走時残差を用いて、自動的に削除することは難しい。高密度観測の場合は、近傍の観測点の波形の特徴を考慮して、正確な自動読み取りが行える可能性があり、今後の課題である。
2.地震とノイズとの識別 0.1満点地震観測計画では、鳥取の約30km四方の範囲に、約800点の地震計を設置している。本発表では、この観測データを用いさせて頂き、開発を行った。満点計画では、狭い領域に多数の観測点を設置することから、全ての観測点をノイズが小さい場所に設置することは難しく、人工的ノイズレベルが大きい観測点も含まれる。このため、数10点以上の観測点で、人工的ノイズや、観測網の外側で発生した小さな地震のP波と、そのコーダを、P波、S波として読み取り、誤った震源を決定する場合があった。そこで、間違って震源決定している地震を除去するための検討を行った。
観測点毎に、P波、S波到着時刻からorigin timeを求め、その標準誤差の分布を調べた結果、ノイズや、観測網から離れた地震の到着時刻を読み取った場合には、標準誤差が0.5秒以上であるが、観測網の内部や近傍の地震の場合には、大部分が0.2秒程度以下であることが示された。そこで、標準誤差が0.5秒以上はノイズであるという判定を加えることにした。この判定により、間違って震源決定される割合は、1%程度以下になった。
3.P波極性の読み取り手法の改良 大規模観測では、詳細な応力場を求めることが、大きな研究目的の一つになっている。このため、P波極性を正確に、かつ、できるだけ多く読み取るための開発を行うことが重要である。極性読み取りには、上下動成分の、1)cut off 周波数が2Hz、2次の高域フィルターを通した波形、2)10次のARフィルターの出力に、1次の低域フィルターを通した波形、を用いた。極性読み取りは、この2種類の波形のどちらかで読み取れた場合に採用するようにした。極性読み取りには、1)P波到着時刻前後のS/N比、2)最初のピーク振幅とノイズ振幅との比、3)P波到着前に、最初のピークとは逆向きの振幅の最大値、4)P波到着時刻から、最初のピークとなる時刻の区間で、最初のピークと逆向きの最大振幅、5)P波到着から1秒間の最大振幅、をパラメータとして用いた。パラメータの設定は、初期設定で極性が読み取れなかったもの、極性を間違って読み取ったものを手動で調べ、どのパラメータが原因で、読み取れなかったか、あるいは、間違って読み取ったかを調べ、経験的に設定するようにした。このチューニングにより、極性読み取り数は、約50%増加した。
4.P波、S波到着時刻データの読み取りと今後の課題 5カ月間の連続波形を用いた場合に、観測網の内部や近傍に震源決定数された地震数は、1200個で、P波、S波の自動読み取り数は、408,000個、411,000個で、平均的走時残差はそれぞれ、0.089秒,0.079秒であった。極性読み取り数は、124,000個であった。自動読み取りの誤差を手動で調べた結果、P波到着直前の0.1-0.3秒の区間で、ノイズ振幅が偶然に大きくなる場合に、ノイズをP波として読み取る場合があることが示された。この程度の誤差は、走時残差を用いて、自動的に削除することは難しい。高密度観測の場合は、近傍の観測点の波形の特徴を考慮して、正確な自動読み取りが行える可能性があり、今後の課題である。