日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 3次元地質モデリングとシミュレーションの新展開

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、木村 克己(独立行政法人防災科学技術研究所)、座長:木村 克己(防災科学技術研究所)

12:00 〜 12:15

[SCG66-05] 地盤の強非線形性と横ずれ断層上の幾何学的バリアの影響を考慮したRiedelせん断帯の生成シミュレーション

*豊田 智大1野田 利弘2山田 正太郎1浅岡 顕3 (1.名古屋大学大学院 工学研究科、2.名古屋大学 減災連携研究センター、3.地震予知総合研究振興会 )

キーワード:横ずれ断層、Riedelせん断帯、弾塑性

横ずれ断層が地下深部において変位すると,その直上の地表面には「ミの字型」に配列する亀裂群が生じることが知られており,「Riedelせん断帯」と呼ばれる.図1は2016年熊本地震の際に布田川断層上で生じたRiedelせん断帯の一例である.また,Riedelせん断帯が地表面に出現するとき,地盤内部には「flower構造」と呼ばれる花弁状のすべり面が複合的に形成される.著者らは材料的初期不整の導入によりRiedelせん断帯が数値的に再現できることを示しているが2),Woodcock et al.3)によれば,このflower構造の形成過程には幾何不整すなわちjogと呼ばれる幾何学的バリアが重要な役割を果たすとされる.例えば,図2はステップを含む左横ずれ断層であるが,図の奥側のようにjogが両側から引かれる場合には,引張応力場の元で正断層的に図3(a)のような負のflower構造が形成されてdepressionを生じる.一方,図の手前側のようにjogが両側から押される場合は,圧縮応力場の下で逆断層的に図3(b)のような正のflower構造が形成されてbulgeが出現する.前者のような引張性jogはpull-apart,後者のような圧縮性jogはpush-upと呼ばれる.本稿では,これらのpull-apartおよびpush-upを模擬した不連続な断層変位場を境界条件として考慮した3次元弾塑性有限変形解析を実施し,横ずれ断層における局所的なjogの存在に起因した分岐断層構造の形成過程を数値解析的に再現した結果を示す.
数値解析には,著者らの研究グループが開発を進めている地盤の動的/静的水~土骨格連成弾塑性有限変形解析コードGEOASIA5)を用いた.本手法は二相系解析にも対応しているが,本稿では一相系条件での解析について述べる.図4のように,y方向を横ずれ断層の走向方向にとる3次元直方体メッシュ(要素数:32800)を用いた.模型底面においては,同図に示すような屈曲した断層領域を設定し,その両側の節点にy方向の右横ずれ強制変位(v=10-6m/s)を与えた.これにより,領域Aでは引き離されてpull-apartの応力場が,領域Bでは圧縮されてpush-upの応力場がそれぞれ表現されることとなる.骨格構造概念に基づく土の弾塑性構成式SYS Cam-clay modelの材料定数は,最も簡単な状態として過圧密のみを考え,一様な間隙比を与えた.このとき,SYS Cam-clay modelは三軸排水せん断時に図5のような応答を示す.すなわち,材料は比較的小さなひずみ領域で塑性膨張に転じる超過圧密土であり,ピーク強度発現後に顕著な軟化を示す脆性的な材料としてふるまう.
図4に示した模型について,解析終了段階におけるせん断ひずみの分布を図6(a)に示す.また,この模型寸法を要素数は変えずにy軸方向に2倍,3倍に拡大することによりpush-upとpull-apartの間隔を変えた模型の解析結果を同図(b),(c)にそれぞれ示す.
等倍模型について,図6(a)のように,push-up側の地表面において,せん断帯の出現が確認できる.そして,同図のせん断帯は,緑色で示された大域的なせん断帯が赤色で示された局所的なせん断帯を内包するfractalな形態をとっている.Riedelせん断帯の自己相似的な発生機構については,Tchalenko6)などにより言及されているほか,図7の上田7)による模擬岩盤を対象とした模型実験においても確認されている.
2倍模型について,図6(b)の地表面の変状を見ると,不連続に連なるRiedelせん断を互いに接続するように伸びるP-shear8)の出現が解かれていることが確認できる.P-shearはRiedelせん断とは逆向きに,かつ二次的に発生するものであり,その出現は,上田7)による模型実験のほか,図1(b)の熊本地震の際に生じたせん断帯にも見て取れる.
3倍模型について,図6(c)をみると,pull-apart側の地表面では高角なせん断帯が引張応力場の下で主動的に形成され,push-up側の地表面では低角なせん断帯が圧縮応力場の下で受動的に形成されることが確認された.図8のように,せん断帯の出現する角度がMohr-coulomb規準より演繹される理論解と一致することも確認された.
以上のように,横ずれ断層におけるjogを境界条件として考慮した弾塑性有限変形解析により,fractalなせん断帯やP-shear,低角・高角なせん断帯といった特徴的な付随断層構造の形成過程を再現できた.
(謝辞)本研究の数値解析は京都大学学術情報メディアセンターのスーパーコンピュータシステムを利用して実施した.また,科学研究費補助金(基盤研究(A):課題番号17H01289)の助成を受けた.
1) 国土地理院: 平成28年熊本地震に関する情報, http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H27-kumamoto-earthquake-index.html, 2017閲覧.
2) 野田,山田,豊田,浅岡 (2015): 横ずれ断層に伴う表層地盤のリーデルせん断帯の形成に及ぼす材料的初期不整の影響, 土木学会論文集A2, Vol.71, No.2, I_463-I_474.
3) Woodcock, N. H. and Fischer, M. (1986): Strike-slip duplexes, Journal of Structural Geology, 8, pp.725-735.
4) Fossen, H. (2016): Structural Geology, Cambridge University Press, pp.377-400, 2nd edition.
5) Noda, T., et al. (2008): Soil-water coupled finite deformation analysis based on a rate-type equation of motion incorporating SYS Cam-clay model, S&F, Vol.48, No.6, pp.771-790.
6) Tchalenko, J. S. (1970): Similarities between shear zones of different magnitudes, GSA Bulletin, Vol.81, No.6, pp.1625-1640.
7) 上田 (2009): 横ずれ断層の変位に伴う岩盤の3次元変形過程, 電力中央研究所研究報告, N08039.
8) Naylor, M. A., et al. (1986): Fault geometries in basement-induced wrench faulting under different initial stress stages, Journal of Structural Geology, Vol.8, No.7, pp.737-752.