日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM16] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 A11 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:山崎 健一(京都大学防災研究所)、相澤 広記(九州大学大学院理学研究院附属・地震火山観測研究センター)、座長:山﨑 健一南 拓斗

16:15 〜 16:30

[SEM16-10] ACTIVEの三次元データ領域インバージョンにおけるMinimum Support Gradient法を用いた比抵抗異常の明瞭化

*南 拓人1歌田 久司1宇津木 充2 (1.東京大学地震研究所海半球観測研究センター、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:ACTIVE、制御電流、インバージョン、火山、モニタリング

近年、火山監視手法の発展・効率化が社会的に強く要請されている。制御電流を用いる火山監視システムACTIVE (Utada et al., 2007)は、この要請に応える重要な選択肢の一つである。ACTIVEは、接地された二箇所の電極から矩形波電流を大地に流し込み、アレイ展開されたインダクションコイルで鉛直磁場変動を観測することで、地下比抵抗構造の変化を監視するシステムである。これまで、阿蘇山や伊豆大島において観測の実績があり、特に阿蘇山では、2014年11月のマグマ噴火の前後で、明瞭なレスポンスの変化が観測された。ACTIVEのような、Transient-EM (TEM)法の原理を用いて得られたControlled-source EM (CSEM)データの解析では、地形を含まない一次元層構造仮定を用いた解析が広く行われてきたが(e.g. Kanda et al. 1996; Srigtomo et al., 2008)、地形効果によるバイアスが解析結果の解釈を困難にしてきた。一方、Mitsuhata et al. (2002)は、二次元のモデル空間と三次元的なソースを扱える2.5次元のTEM法インバージョンコードを開発しているが、火山の三次元的な地形並びに地下構造を、二次元モデルとして扱えるかどうかには疑問が残る。Utada et al. (2007)は、三次元のモデルに関する非線形順問題を、Born近似を用いて線形問題に落とし込み 、リアルタイムモニタリングに適用可能な比抵抗構造変化の推定手法を開発した。しかしながら、元問題の強い非線形性から、比抵抗の値が低く見積もられることや、得られるイメージの不明瞭さが指摘されている。その他、陸上CSEM探査結果の三次元インバージョン解析も近年実施されているが(e.g. Grayver et al., 2014)、CSEMによる火山体モニタリングに適した三次元インバージョン手法は、これまで開発された例がない。
 本研究では、ACTIVEに適した三次元のインバージョンコードを、非構造格子を用いた辺要素有限要素法 (e.g. Schwartzbach and Haber, 2013)、データ領域のGauss-Newton法 (e.g. Kordy et al., 2016)、並びに、Minimum Support Gradient 法による正則化(Xiang et al., 2017)を組み合わせることで、開発した。四面体を用いた非構造格子は、制御電流に伴う電磁場強度の空間変化にメッシュ解像度を適応させることが容易であり、加えて、観測点付近メッシュの高解像度化や詳細な地形表現の実現が可能である。データ領域のインバージョン手法は、データ数がモデルパラメタの数に比べて著しく少ない場合に、計算時間を抑えるための有効な手法であり、将来的なリアルタイムモニタリングに適した方法といえる。Xiang et al. (2017)がMT法インバージョンのために提案したMinimum Support Gradient法は、三次元的な比抵抗異常体の表面積を小さくする働きを持っており、ACTIVEの問題においても得られる比抵抗異常の明瞭化が期待できる。本研究では、阿蘇山の中岳第一火口直下に低抵抗異常がある場合を真の構造とするインバージョン試験を行い、開発したインバージョンコードの有効性、また、阿蘇山における有効なACTIVEの送信点/受信点の配置を調べた。その結果、我々のインバージョンは、火口直下の比抵抗異常の境界を、上端と水平境界に関しては、正確に特定することに成功した。また、Mitsuhata et al. (2002)が2.5次元インバージョンで指摘したものと同様に、三次元のACTIVE問題においても、二つ以上の電流ソースの存在が著しくインバージョン結果を改善することを発見した。
 本発表では、我々が開発したインバージョンの手法を紹介すると共に、阿蘇山の地形を用いたインバージョン試験の結果と、Minimum Support Gradient法の効果について述べる予定である。