日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM17] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、清水 久芳(東京大学地震研究所)、座長:畠山 唯達清水 久芳(東京大学地震研究所)

09:45 〜 10:00

[SEM17-04] 地磁気双極子モーメントの平均値を求めるには何個の絶対古地磁気強度が必要か?

*吉村 由多加1山崎 俊嗣1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:地球磁場、仮想双極子モーメント、古地磁気学、モンテカルロシミュレーション、絶対古地磁気強度

過去20年間で、地球磁場の長期的な仮想双極子モーメント(VDM)、あるいは仮想地心軸双極子モーメント(VADM)の平均値を火山岩由来の絶対古地磁気強度から決定しようとする研究が数多くなされてきた[e.g. Juarez et al., 1998; Juarez & Tauxe, 2000; Yamamoto & Tsunakawa, 2005]。しかし、肝心のV(A)DM平均値を求めるための基準が確立されていない。具体的に言えば、「何個の絶対古地磁気強度を求めれば真のV(A)DMの平均値を求めることができるのか」ということである。そもそも火山岩から絶対古地磁気強度を求めることは容易ではない[例えば、Tauxe & Yamazaki, 2015]。だが、古地磁気学の目標の一つが地球磁場の正確な姿を捉えて解明することである以上、この問題を避けて通ることはできない。私たちは本発表にて、モンテカルロシミュレーションを用いて、平均V(A)DMを得るために必要な絶対古地磁気強度データ数の基準を提案する。例えば堆積物から得られた高解像度古地磁気強度記録をスタッキングした1.5Myr中の連続したV(A)DM標準曲線であるPISO-1500 [Channell et al., 2009] (母集団と呼ぶ)から、2個以上のデータをランダムに抽出し平均を求める(標本平均と呼ぶ)。そしてそれぞれの個数の場合について、母集団平均値7.2×10^22 Am^2の前後5~10%の範囲に含まれる確率を100回繰り返して計算し、100%となったところで打ち切りとした。私たちは、100%の確率で母集団平均値±10%に標本平均が含まれる場合の個数は19個、±9%では27個、±8%では28個、±7%では47個、±6%では76個、±5%では89個という結果を得た。母集団平均値±10%という精度の標本平均なら最低20個、より厳密なV(A)DM平均値を標本平均から推定するためには100個近くの絶対古地磁気強度が必要であることを示唆している。PISO-1500は1kyr間隔の標準曲線である。したがって、時間範囲に対する割合に直すとそれぞれ全体の1.3%、6.7%の絶対古地磁気強度となる。私たちは長期的なVDMを求めようとした先行研究にはこの新しい基準による見直しが必要であると提案する。