日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2018年5月23日(水) 09:00 〜 10:30 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:Takayuki Miyazaki(Geospatial Information Authority of Japan)、山本 圭香(国立天文台)、座長:風間 卓仁田中 俊行

10:00 〜 10:15

[SGD01-05] 過去の稠密重力データの日本重力基準網2016への整合手法の高度化

*宮崎 隆幸1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:日本重力基準網2016

国土地理院は,全国に等しく正確な重力基準を提供するため,最新の重力測定のデータを用いて,絶対重力測定点約30点及び相対重力測定点約200点で構成される「日本重力基準網2016(JGSN2016)」を構築した.JGSN2016の精度は,絶対測定で約10μGal,相対測定で約20μGalと見積もられている.それに加えて,国土地理院は稠密な全国の重力分布を把握し,水準測量に正確な正標高補正を行うために1967~1993年に水準点や主要な三角点において相対重力測定を実施してきた.この測定で得られた日本全国を網羅する約14,000点におよぶ稠密な重力データは計量機器の校正など,現在も重力の基準として広く活用されている.しかし14,000点での重力データはJGSN75に基づく重力値であることから,現在のJGSN2016に基づく測定とは必ずしも測定誤差の範囲で一致しない.国土地理院が公開するJGSN75とJGSN2016の間の乖離は最大で数100μGalに達する.

全国を網羅する稠密な重力データは,近年GNSSを用いた標高決定が高度化し,普及したことに伴って,高さの基準面としてのジオイド・モデルを構築する基盤データとしてさらに重要性が増している.ジオイド・モデルの精度・信頼性を向上するためには,信頼度の高い最新の稠密な地上重力データが不可欠であるが,全国を網羅する重力測定を新たに行い,完全にJGSN2016に準拠した稠密なデータを短期間で得ることは,人的・経済的なリソースを考慮すると非常に困難である.

我々はこれらの課題の解決を目的として,JGSN75重力値をJGSN2016重力値に整合させるための手法の開発を進めている. JGSN75重力値とJGSN2016重力値の差を地殻変動に起因する測定点の上下変動,地震による質量の再配分と系の構築時に既に存在していたシステムオフセットに分けて推定することで約40μGalの精度の変換を可能とする整合手法について報告するとともに,国土地理院以外の機関の重力データへの当手法の適用やジオイド構築への影響について報告する.