日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD01] 重力・ジオイド

2018年5月23日(水) 09:00 〜 10:30 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:Takayuki Miyazaki(Geospatial Information Authority of Japan)、山本 圭香(国立天文台)、座長:風間 卓仁田中 俊行

10:15 〜 10:30

[SGD01-06] 沈み込み帯前弧における重力異常の運動学的考察

*岩間 翔平1岩瀬 裕斗2生田 領野3 (1.静岡大学総合科学技術研究科、2.名古屋大学大学院環境学研究科、3.静岡大学理学部)

キーワード:フリーエア異常、TPFRs、沈み込み帯

本発表では,GNSS変位速度で表したプレート間カップリングから,海溝平行前弧リッジ(TPFR)の成因について運動学的に考察した結果を示す. TPFRは前弧に海溝平行方向に連続して見られる,地形的・重力的に隆起した領域である.Bassett and Watts (2015)は,海溝平行方向の地形,重力の平均値からの偏差をそれぞれTPGA(海溝平行重力異常), TPTA(海溝平行地形異常)とし,これらの値が極大をとる場所をTPFRと定義した.彼らはTPFRの位置がプレート境界型地震の下限と一致していることを指摘した.また,岩瀬(2017 JpGU)は,TPFRでのフリーエア異常の大きさとスラブの年代の関係を検討し,90Maまでの若いスラブで,フリーエア異常値の上限がスラブの年齢と比例していると指摘し,剛性の高いスラブほど上盤側を強く持ち上げ大きなフリーエア異常を作ることができると解釈した. TPFR生成に対する,沈み込むスラブと上盤プレートの相互作用の影響を検討するため,本研究ではプレート間カップリングによる前弧域の地殻変動とTPFRのフリーエア異常の大きさの関係を調査した.研究の対象とした沈み込み帯は環太平洋のものとジャワ海溝,プエルトリコ海溝とした.沈み込み帯のGNSS観測点の運動速度から,プレートの剛体運動からのずれを推定し,これとTPFRのフリーエア異常の大きさ,スラブの年代の相関を検討した. 前弧域の海溝直交方向の圧縮,伸長とTPFRのフリーエア異常の大きさを検討した結果,拡大場では,拡大速度とフリーエア異常値に線形関係が見られた.強い拡大場ほど,逆にBasal shearによる前弧域の押しつけが強くなり,TPFRを成長させている可能性が考えられる(Schellart and Moresi, 2014). 逆に圧縮場では,明瞭な比例関係は見られ無いものの,TPFRのフリーエア異常に下限が見られ,この値が圧縮の大きさと相関しているようである. また,調査地点全体について,岩瀬(2017 JpGU)のスラブ年代―TPFRのフリーエア異常の散布図と同様の図を描いたところ,岩瀬で見られたようなフリーエア異常の上限が年代に比例する分布は見られなかった.岩瀬(2017 JpGU)のスラブ年代―フリーエア異常に見られた比例関係は,データの少なさによる見かけのものであった可能性が示唆された.