日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学一般・GGOS

2018年5月23日(水) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(海上保安庁海洋情報部)、若杉 貴浩(国土交通省国土地理院)

[SGD02-P01] 迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築に関する研究(1)

*中川 弘之1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:GNSS、PPP-AR、GEONET、GEONET定常解析

国土地理院はGEONETで取得されるGNSSデータを定常的に解析し、日本全国の地殻変動を監視している。地震発生時においてはこの結果は、地震本震及び余効変動による地殻変動データとして、またこれを使用して構築した震源断層モデルとして関係機関に提供されており、地震活動の評価等に活用されている。また、火山活動に伴う地殻変動データは、火山の山体変形の監視や、噴火時には噴火活動の推移監視における基礎的な資料として活用されている。

しかし、地震発生のタイミングや火山活動の進行速度によっては、現在のGEONET定常解析の性能をもってしても迅速性や時間分解能が不十分な場合もあり、より迅速で高い時間分解能を持つ定常解析手法が求められている。

そこで、我々は精密単独測位法(Precise Point Positioning; PPP)に着目した。これは、GNSS衛星の精密な軌道および時刻情報を用いて、各観測局で単独測位を行うものである。PPPの特徴は、格段に少ない計算負荷で、1エポックごとの位置を算出できることである。これは、高い時間分解能の位置の時系列を解として、迅速に得られることを意味する。さらに、近年、衛星毎に異なる位相端数バイアス(Fractional Cycle Bias; FCB)と呼ばれる補正情報を追加することで、PPPにおいて波数の整数不確定性を決定する(Ambiguity Resolution; AR)ことが可能となり(PPP-AR法)、干渉測位法に匹敵する精度を出せる可能性が高くなった。さらにPPP-AR法には、超巨大地震で広域な地殻変動が発生した場合についても、電子基準点の変位を直接に算出でき固定点が不要であるという利点もある。

このようなわけで、国土地理院では、PPP-AR法をベースに現在の定常解析よりも迅速・高精度な GNSS 解析手法を開発し、将来のGEONET定常解析を想定してこれを実装したプロトタイプシステムを開発すること目的とする特別研究「迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築に関する研究」を、2017年度より3年計画で開始した。この研究では、GEONETの1秒値データを用いて、定常的かつ安定的に、1秒間隔で水平方向のばらつき約1cmの解を、データ収集の約2時間後までに算出することを目標としている。

2017年度は、7月末から8月末の30日間において、約1300点のGEONET全点について試験解析を行い、24時間スパンの1秒値の時系列解を12時間おきに1日2回算出した。本講演では、時系列解の再現性や外れ値等についての統計を紹介する。