16:15 〜 16:30
[SGL29-09] 熊野海盆堆積物の古地温構造から推定される付加体からの流体供給
キーワード:南海トラフ地震発生帯掘削、熊野海盆、輝炭反射率、古地温構造
本研究では南海トラフ付加体と付加体上に堆積した熊野前弧海盆及び斜面堆積物の古地温構造を明らかにした。IODP南海トラフ地震発生帯掘削のサイトC0004・C0007・C0009において回収されたコア・カッティングス試料を用い、堆積物中の輝炭(ビトリナイト)反射率を測定することにより古地温を推定した。古地温推定の結果、熊野海盆とその下の付加体を掘り抜いたサイトC0009において、熊野海盆堆積物中に温度異常が認められた。熊野海盆のUnit IIIに相当する深度1000~1200m付近に200mの幅において最高79℃に達する高い温度が認められた。温度異常帯はピークを持ち、上下方向に温度が低くなる構造をもつことから、地質体より温度の高い流体が通過することによって温度異常が形成されたと推測される。ビトリナイトの反応速度式を用いた流体の温度・時間推定から、80~100℃の流体が100ky間通過すると本研究で認められた温度異常を作るということが分かった。
熊野海盆では泥火山が存在し、泥火山からはプレート境界に相当する高温を経験した流体が確認されている(Nishio et a., 2015)。またこれら泥火山はかつて活動していた分岐断層に沿って存在しており、分岐断層を通じた流体の上昇が示唆されている(Tsuji et al., 2015)。分岐断層はC0009サイト近傍を通過しており、断層直上の熊野海盆中にはガス溜まりが確認されている。C0009近傍には他にもリッジを形成する際に活動したと考えられる断層があり、その上部にもガス溜まりが確認でき、C0009の温度異常帯付近(UnitIII)に連続している。実際C0009のUnit IIIは現在でもメタンを主としたガスに富む。80℃程度の流体が通過したと考えられる温度異常帯も同様に断層を通じて供給されていたと考えられる。これらの結果から、沈み込み帯の流体循環は地震発生帯のような活動的な場のみでなく非活動的な場においても大規模に起こっていると考えられる。
熊野海盆では泥火山が存在し、泥火山からはプレート境界に相当する高温を経験した流体が確認されている(Nishio et a., 2015)。またこれら泥火山はかつて活動していた分岐断層に沿って存在しており、分岐断層を通じた流体の上昇が示唆されている(Tsuji et al., 2015)。分岐断層はC0009サイト近傍を通過しており、断層直上の熊野海盆中にはガス溜まりが確認されている。C0009近傍には他にもリッジを形成する際に活動したと考えられる断層があり、その上部にもガス溜まりが確認でき、C0009の温度異常帯付近(UnitIII)に連続している。実際C0009のUnit IIIは現在でもメタンを主としたガスに富む。80℃程度の流体が通過したと考えられる温度異常帯も同様に断層を通じて供給されていたと考えられる。これらの結果から、沈み込み帯の流体循環は地震発生帯のような活動的な場のみでなく非活動的な場においても大規模に起こっていると考えられる。