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[SGL30-05] U-Pb法およびK-Ar(Ar-Ar)法による若い試料の年代測定における課題
キーワード:U-Pb年代、K-Ar(Ar-Ar)年代、過剰40Ar、ジルコン、common Pb、非平衡
近年、ICP-MS, SIMSなどの質量分析技術の進歩により、ジルコンなどを用いたU-Pb年代測定の適用年代がに拡大し、現在では100万年より若い試料などにも試みられるようになってきた。その結果、これまで主にK-Ar(Ar-Ar)年代法で測定されてきた若い火山岩試料などに対しても、ジルコンによるU-Pb年代によって代用されたりするようになってきた。しかし若い年代試料では放射性起源同位体の量が少なく、U-Pb, K-Ar系においける信頼性のある年代値を得るために不可欠な要件を検討しておくことが重要である。
U-Pb年代測定法で用いるジルコンは、変質などの二次的影響を受けにくく、コンコーディア図を採用することでその影響も見積もることができる場合も多い。またジルコン粒子の局所分析なども可能となっている。そのためジルコンによるU-Pb年代は、数千万年より古い試料などに対しては、二次的な影響を受けやすいK-Ar年代よりも生成年代の値を維持している可能性がある。しかしジルコンは主としてケイ酸塩質マグマで形成されるので、玄武岩や斑レイ岩など塩基性マグマ由来の試料から見出すことは非常に難しく、大洋地域の火山岩などにジルコンを用いたU-Pb年代測定を適用することは困難である。一方Kを含む試料は大洋・大陸地域に関係なく広く分布しているので、K-Ar年代測定法は非常に汎用性が大きい。またAr-Ar適用することによりレーザー加熱をによる鉱物粒子の局所分析が可能となり、段階加熱法を採用することで二次的な影響を受けた試料に対しても信頼性のある生成年代を得ることが可能になっている。
100万年より若い試料に対して、K-Ar(Ar-Ar)法では大気補正に関する前提条件の妥当性、過剰40Arの存在の影響などが大きな問題として挙げられる。放射性起源40Arを算出する際の前提となる大気の40Ar/36Arの値は、マグマ噴出時において現在の大気から質量分別を生じている可能性があるが、これに対しては38Ar/36Arの試料と現在に大気の値のずれから質量分別の程度を推定して補正できると考えている。しかし過剰40Arが存在していると、この前提はなりたたない。そのため現在の分析技術でも1万年以下の玄武岩でも数値を算出することは可能であるが、玄武岩質試料の場合にある程度の信頼性をもった年代数値としてだせるのは、数万年程度と考えておいた方が無難である。
これに対して、100万年程度より若いジルコンのU-Pb年代測定に対しては、common Pb, inherited Pb の補正や、 238U-206Pbと235U-207Pb系の間で生じる非平衡の問題がある。Common Pbの補正には安定同位体である204Pbを基準として、試料が得られた環境を反映したcommon Pbの206Pb/204Pb,207Pb/204Pb の値を用いる。しかし204Pb量は相対的に少ないので測定精度が低く、その補正にともなう誤差をきちんと見積もると放射性起源Pbの測定精度にも影響が及ぶことが少なくない。またジルコンが、マグマ中でどの程度の時間をかけて生成されるかについてはよく分かっていない。そのため、ジルコンの示す年代数値が、マグマの噴出年代と対応するとは限らない場合も生じている可能性がある。さらにU-Pb系が非平衡であると、コンコーディア図におけるばらつきの原因の前提条件が成り立たなくなるので、得られた数値が地学的な現象に対応するとは判断できない。これらの問題は、特に放射性起源同位体の量が少ない若い年代試料に大きな影響を与えるので、100万年より若いジルコンのU-Pb年代数値に対しては、十分に慎重な取り扱いが必要である。
U-Pb年代測定法で用いるジルコンは、変質などの二次的影響を受けにくく、コンコーディア図を採用することでその影響も見積もることができる場合も多い。またジルコン粒子の局所分析なども可能となっている。そのためジルコンによるU-Pb年代は、数千万年より古い試料などに対しては、二次的な影響を受けやすいK-Ar年代よりも生成年代の値を維持している可能性がある。しかしジルコンは主としてケイ酸塩質マグマで形成されるので、玄武岩や斑レイ岩など塩基性マグマ由来の試料から見出すことは非常に難しく、大洋地域の火山岩などにジルコンを用いたU-Pb年代測定を適用することは困難である。一方Kを含む試料は大洋・大陸地域に関係なく広く分布しているので、K-Ar年代測定法は非常に汎用性が大きい。またAr-Ar適用することによりレーザー加熱をによる鉱物粒子の局所分析が可能となり、段階加熱法を採用することで二次的な影響を受けた試料に対しても信頼性のある生成年代を得ることが可能になっている。
100万年より若い試料に対して、K-Ar(Ar-Ar)法では大気補正に関する前提条件の妥当性、過剰40Arの存在の影響などが大きな問題として挙げられる。放射性起源40Arを算出する際の前提となる大気の40Ar/36Arの値は、マグマ噴出時において現在の大気から質量分別を生じている可能性があるが、これに対しては38Ar/36Arの試料と現在に大気の値のずれから質量分別の程度を推定して補正できると考えている。しかし過剰40Arが存在していると、この前提はなりたたない。そのため現在の分析技術でも1万年以下の玄武岩でも数値を算出することは可能であるが、玄武岩質試料の場合にある程度の信頼性をもった年代数値としてだせるのは、数万年程度と考えておいた方が無難である。
これに対して、100万年程度より若いジルコンのU-Pb年代測定に対しては、common Pb, inherited Pb の補正や、 238U-206Pbと235U-207Pb系の間で生じる非平衡の問題がある。Common Pbの補正には安定同位体である204Pbを基準として、試料が得られた環境を反映したcommon Pbの206Pb/204Pb,207Pb/204Pb の値を用いる。しかし204Pb量は相対的に少ないので測定精度が低く、その補正にともなう誤差をきちんと見積もると放射性起源Pbの測定精度にも影響が及ぶことが少なくない。またジルコンが、マグマ中でどの程度の時間をかけて生成されるかについてはよく分かっていない。そのため、ジルコンの示す年代数値が、マグマの噴出年代と対応するとは限らない場合も生じている可能性がある。さらにU-Pb系が非平衡であると、コンコーディア図におけるばらつきの原因の前提条件が成り立たなくなるので、得られた数値が地学的な現象に対応するとは判断できない。これらの問題は、特に放射性起源同位体の量が少ない若い年代試料に大きな影響を与えるので、100万年より若いジルコンのU-Pb年代数値に対しては、十分に慎重な取り扱いが必要である。