日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL31] 地域地質と構造発達史

2018年5月20日(日) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SGL31-P16] 中部地方中央構造線における断層ガウジのK-Ar年代

*杉山 幸太郎1高木 秀雄1河本 和朗2 (1.早稲田大学創造理工学研究科地球・環境資源理工学専攻、2.大鹿村中央構造線博物館)

キーワード:中央構造線、赤石構造線、断層ガウジ、イライト、K-Ar年代、IAA

中央構造線(MTL)はおよそ1億年の活動史を持ち, 異なるステージ (時階) の活動を繰り返しているため, 新しいステージの断層が古いステージの断層に重複していることが知られている (Kubota and Takeshita, 2008). 1980年代後半からは, 断層破砕帯に含まれる熱水変質による自生雲母粘土鉱物 (イライト) のK-Ar年代を用いることにより, ステージに年代データを与えることが可能になり, ステージの細分化が進んだ (例えば, 柴田・高木, 1988; 高木・柴田, 1992).
旧来の手法では, 熱水変質による自生イライトに対する, 母岩に含まれていたイライトの混入を正確に評価することができず, 粒子が細粒 (<2 μm) でイライト結晶化度 (IC値) が続成領域を示した場合に年代の意義を与えていた. しかし, Pevear (1992) により, 粒度によって分けた複数のフラクションについて, ポリタイプ (1Md : 2M1比) とK-Ar年代の測定を行い, 1Mdが100 % となる回帰直線の切片を求めることにより年代を解釈するillite age analysis (IAA) が提案された. それによって, 自生イライトの生成年代を推定することが可能となり, 旧来の手法による年代データを再検討する必要がでてきた.
本研究では, IAAを主に中部地方MTLにおいて採取した泥質片岩由来のガウジに適用し, 断層の活動年代を推定した. その結果, 大鹿村安康西露頭および佐久間町下平露頭の試料からはそれぞれ15.2±1.8 Maおよび12.1±6.3 Maの自生イライトの年代が得られた. 一方, 水窪町途中島露頭から得られた18.7–16.8 MaはIAAを適用することができなかったが, IC値やSEMによる粒子形状の観察から, 自生イライトの年代を示している可能性が高い. また, 紀伊半島東部の多気露頭の試料からは39.4±1.6 Maが得られた.
この結果および既存のデータの再検討から, 旧来の手法のみを根拠として年代が推定されている赤石時階は5–10 myrほど若く修正されることが明らかとなった. 下平露頭から得られた12.1 Maについては誤差が大きいことから, 赤石時階または石鎚時階 (14–12 Ma) に含まれる可能性がある. 一方, 多気露頭から得られた39.4 Maは「先砥部時階」を反映していると考えられ, 断層ガウジによる15 Ma前後の年代は, Tanaka et al. (1995) による赤石構造線の断層ガウジの年代 (15 Ma) を踏まえても, 中部地方特有のものであることを示唆し, 伊豆孤の衝突に伴うMTLの折れ曲がりと, MTLに収斂する赤石構造線の活動のイベントとしての赤石時階の位置付けが, より明確になった.

文献
Kubota, Y., Takeshita T., 2008, Island Arc, 17, 129–151.
Pevear D. R., 1992, Proc. 7th Intern. Symp. Water-Rock Interaction. Balkema, Rotterdam, 1251–1254.
柴田 賢・高木秀雄, 1988, 地質雜, 94, 35–50.
高木秀雄・柴田 賢, 1992, 地質学論集, no. 40, 31–38.
Tanaka, H., Uehara, N. and Itaya, T., 1995, Contrib Mineral. Petrol. 120, 150–158.