日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT28] The lithosphere and the asthenosphere

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 302 (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:Catherine Rychert(University of Southampton)、川勝 均(東京大学地震研究所)、Samer Naif(共同)、Jessica M Warren (University of Delaware)、座長:Rychert Catherine

16:45 〜 17:00

[SIT28-12] 大陸リソスフェアの熱・運動史:北アメリカ大陸コロラド高原-リオグランデリフトに産するマントルゼノリスからの制約

*成田 冴理1小澤 一仁1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:リソスフェアの熱・運動史、マントルゼノリス、地質温度圧力計

大陸リソスフェアはアセノスフェアとの熱的・化学的・力学的相互作用によって生じる火成活動やテクトニクスの結果、地質学スケールで見るとダイナミックに進化している。この大陸リソスフェアの進化の理解のためには、リソスフェアーアセノスフェア境界域(LABZ)で起きている現象の解明が重要である(Sleep, 2005)。本研究のアプローチは、マグマによって急速に地表に持ち上げられたマントル物質である「マントルゼノリス」からその化学組成・微細組織分析によってリソスフェア-アセノスフェアの情報を直接抽出する方法である。最も鍵となる情報は「深さ」である。深さを軸とし、地球内部の温度、化学組成、微細組織の情報を得ることでリソスフェアの状態を把握できる。深さ推定には、鉱物の化学組成を利用した圧力計の適用が有用であるが、ゼノリス中の鉱物に不均質性が見られることから、適用は簡単ではない。しかし不均質性はLABZでの様々な変動を反映した結果であることから、このことを考慮し、圧力計に必要な鉱物の組み合わせや場所を選ぶことで正確な深さの推定、そして熱・運動履歴を読み取ることが出来る。本研究の目的は、地形、地殻—LABZの構造が対照的な隣接する北アメリカ大陸コロラド高原(CP)およびRio Grande Rift (RGR)を研究対象として選び、LABZでの現象解明である。研究対象として、CPからは、Navajo volcanic fieldに属するThumbを、RGRからは、Potrillo volcanic field に属するPotrilloを選択した。


Thumbに産するペリドタイト中に含まれるガーネットは常に、様々な粒径(最も粗い外側縁は数十μm)のスピネルおよび輝石(±斜長石)の集合体からなる反応縁によって囲まれ、減圧によるかんらん石との反応によって分解しつつあり、ThumbとPotrillo で産するペリドタイトには広く、オリビン中のCa、OpxやCpx中のCa、Al、Crに不均質性が認められることからわかるように、全ての岩石が非平衡状態を保存している。オリビンとOpxのCaのゾーニングの拡散モデルを用いた定量的な解析と他の不均質性の特徴から、ゼノリスがマグマに取り込まれる直前、マグマに取り込まれる>>~100年前等、サンプル毎に、温度圧力条件を保存している結晶内の場所、成分、組成を獲得した時間を特定した。また、ガーネットが反応する前の温度圧力に、斜方輝石の中心部の組成を使用して制約をかけた。その結果、Thumbの深部(~3GPa)のゼノリスは、噴火>>~100年に顕著な加熱・冷却の証拠が認められない減圧を経験したことが明らかになった。浅部 (~2GPa) のゼノリスは、加熱およびその後の冷却イベントを伴う、ガーネット安定領域からスピネル領域へ長い時間(~10万年) をかけての2GPa程度の減圧を経験したこと、噴火の>>~100年前から再び等圧加熱イベントが始まり、噴火の直前まで進んでいたことが明らかになった。一方、Potrilloでは、スピネルレルゾライト領域の深部(~1.6GPa)で長期間の冷却の後に加熱イベントを、浅所(~0.08GPa)で減圧と加熱イベントを経験したことが明らかになった。以上から、Thumbでは、マグマ活動前の25Maまでに、リソスフェアの長時間の加熱を伴った上昇があったことが示唆される。これに基づいて、リソスフェアの底が熱いアセノスフェア上昇による熱・化学浸食で薄化し、全体として上昇したことでコロラド高原の地形が形成されたと考えられる。Potrilloでは、マグマ活動前の0.08Maまでに、深部が冷却の後に加熱を経験し浅所は上昇と加熱を経験したことから、CPリソスフェアが形成後、その周縁にあった薄いリソスフェアが展張場におかれた結果、さらに薄くなり、その結果受動的アセノスフェア上昇を誘引し、RGR地形が形成されたと考えられる。