日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP34] Oceanic and Continental Subduction Processes

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:Hafiz Ur REHMAN (Department of Earth and Environmental Sciences, Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University)、辻森 樹(東北大学)、Chin Ho Tsai

[SMP34-P12] 宮津花崗岩の希土類元素化学組成

*清水 和冬1壷井 基裕1 (1.関西学院大学)

キーワード:宮津花崗岩、バソリス、希土類元素

兵庫県北部から京都府の宮津地域にかけて分布する宮津花崗岩は,白亜紀後期から古第三紀の花崗岩類であり,直径約30 kmのバソリスを形成する。岩体の北部から中部は粗粒角閃石黒雲母花崗岩で,南部は中粒黒雲母花崗岩で構成される。先行研究で黒雲母のK—Ar年代は64.8 ± 1.5 Maおよび67.2 ± 1.5 Ma (西垣, 2010)が報告されている。また,Rb-Sr全岩-鉱物アイソクロン年代およびSr同位体比初生値(SrI)は60.4 ± 0.9 Ma (SrI=0.70769)および61.9 ± 0.9 Ma (SrI-=0.70725)が報告されている。SrIの違いなどから,宮津花崗岩はマグマソースや活動時期を若干異にする複数のマグマ活動によって形成された複合岩体である可能性が高いことが示唆されている。宮津花崗岩については,西垣(2010)による黒雲母のK—Ar年代および主成分・微量成分元素の報告以降詳しい研究がなされていない。そこで本研究では、新たにマグマの起源や分化過程の解析に有意義な情報をもたらすREEに着目し、宮津花崗岩の全岩化学組成分析を行った。主成分・微量成分元素分析は波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)を用いて,また,REE組成分析は誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて測定した。主成分元素において,SiO2量は64.4-74.0 wt.%の範囲を示した。各元素の挙動は,SiO2の増加に伴ってTiO2,Al2O3,Fe2O3,MnO,MgO,CaO,P2O5が減少し,Na2O,K2Oが増加する傾向を示した。SiO2量は岩体の南部から北部にかけて増加する傾向を示した。微量成分元素のハーカー図で各元素の挙動は,SiO2の増加に伴いTh,Pb,Rbが増加し,Sr,Zr,Zn,Co,Vが減少する傾向を示した。しかし,それ以外の元素は明瞭なトレンドを示さなかった。コンドライトで規格化したREEパターン図は,全てのサンプルで軽希土類元素(LREE)に富み,重希土類元素(HREE)に乏しい右下がりの傾向を示した。Eu異常は北部と南部で正と負の両方の異常,中部で負の異常のみ確認できた。∑REE(REE total)とEu異常値の関係は,南部は∑REEが増加するとEu異常値が小さくなるトレンドを示し,北部と中部は南部のトレンドには当てはまらなかった。また,主成分元素において,ハーカー図上では北部,中部,南部ともに同一のトレンドを示しているものの,La/Yb比とCaO量,Sr量の関係は,各地域で異なるトレンドを示した。以上の結果より,宮津花崗岩は単一のマグマではなく,複数のマグマ活動によって形成された可能性が高い。

引用

西垣貴史, 2010, 関西学院大学大学院理工学研究科修士論文.

Y. Terakado, S. Nohda, 1993, Chemical Geology, 109, 69-87.