日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP37] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、座長:中村 佳博(産総研)、田口 知樹(京都大学 大学院理学研究科)

10:15 〜 10:30

[SMP37-05] ざくろ石の累帯構造からケリファイト化の反応速度を求める試み

*小畑 正明1 (1.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:ケリファイト、ざくろ石、拡散、ゾーニング、反応速度

マントル起源のざくろ石かんらん岩、エグロジャイトあるいはざくろ石グラニュライトではざくろ石は部分的あるいは完全にケリファイト化、すなわち低圧で安定な鉱物の細粒集合体に置き換わっていることが普通に見られる。ケリファイト縁は高圧で形成されたざくろ石が岩体上昇に伴う圧力低下により,単独で,あるいは隣接するかんらん石と反応しながら発達する。ケリファイトの記載的、分析的研究は多いが、その速度論的研究はこれまでほとんどなかった。本研究では部分的にケリファイト化したざくろ石のゾーニングの幅から反応速度を推定する試みを行った。ゾーニングはざくろ石分解時、ざくろ石が反応前線で反応生成物と界面平衡を保とうとすることでざくろ石結晶内に発生する元素拡散とざくろ石結晶境界面の後退移動のせめぎ合いで成立した定常的な濃度勾配であると考えることができる。この定常拡散モデルでは,ざくろ石内の元素の拡散係数D ,界面の移動速度V とゾーニングの特徴的な長さL との間には次のような簡単な関係が成立する ( 例えばLasaga, 1998) 。
  D/V= L        (1)
この式を用いることで、ケリファイトに隣接するざくろ石のゾーニング幅と反応時の拡散係数がわかれば界面の移動速度、すなわちケリファイト化の速度を見積もることが原理的には可能である。しかし現実には、拡散係数を温度の関数として知ることと、個々のサンプルのケリファイト化時の正確な温度見積もりが必要である。実験的に求められたざくろ石の拡散係数は研究者間の系統誤差が大きく、これも大きな不確定性の源となる。そこで本研究では異なった熱史をこうむった様々な産状のサンプルを比較することでサンプル間の系統的関係を求めるアプローチをとった。用いたサンプルは筆者らがこれまで調べてきたスペインのロンダざくろ石かんらん岩とざくろ石輝岩、チェコの高温のざくろ石かんらん岩(Mohelno)と比較的低温のざくろ石かんらん岩 (Plesovice)、及びノルウェーのざくろ石かんらん岩である。この方法で、いま試みに ざくろ石のFe-Mg 相互拡散係数として1000 ℃の実験値10-21 m2/s ( 例えばFreer, 1981)を使い,ロンダサンプルの L として観察された値 1μmを代入すると、V =0.03 μm/year を得る。これはすなわち 1mm 幅のケリファイト縁が成長するのに約3万年を要するということである。

参考文献:
Freer, R.(1981) Contrib. Mineral. Petrol. 76, 440-454.
Lasaga, A. (1998) Kinetic Theory in the Earth Sciences, Princeton Univ. Press.