日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP37] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、座長:今山 武志(岡山理科大学自然科学研究所)、東野 文子(東北大学大学院環境科学研究科)

11:15 〜 11:30

[SMP37-08] 隠岐片麻岩類の変成圧力温度条件と変成年代の推定:古原生代高温変成作用の可能性について

*川端 凌市1今山 武志1加藤 丈典2 (1.岡山理科大学、2.名古屋大学)

キーワード:隠岐、変成岩、CHIME、地質温度圧力計

隠岐島後北東部には、高温型の隠岐片麻岩類が産出し、ミグマタイト質片麻岩、泥質片麻岩、花崗岩質片麻岩などからなる。隠岐片麻岩類は、古生代初期頃に形成され、約250 Maに広域的な変成作用を被っているとされる (Suzuki and Adachi, 1994)。一方、角閃岩相 (3-4kbar, 580-680℃) とグラニュライト相(750-820℃)の二つの変成作用が知られる(浜田ほか, 1996)ものの、約250Maの変成年代がどの変成圧力―温度条件の時期を示すかは不明であった。本研究では、岩石組織と対応付けたU-Th-Total Pb Chemical Isochron Method (CHIME) 年代測定を実施して、変成年代と変成圧力温度条件のリンクを行ない、隠岐片麻岩類の形成過程を解明した。その結果、ザクロ石に包有されるモナズ石は約1900-2100Maの年代値を示し、古原生代に高温変成作用を被っている可能性があることがわかった。

隠岐島後の東郷川、銚子川から採集してきた片麻岩類について、偏光顕微鏡観察、各鉱物の定量化学組成分析、ザクロ石とモナズ石の組成マッピングを行なった。次に、ザクロ石-黒雲母-斜長石-石英地質温度圧力計(Perchuk, 1985; Hoisch, 1990)により変成圧力温度条件を推定した。加えて、モナズ石のマッピングと組織に基づいて、名古屋大学にてCHIME 年代を測定した。

ザクロ石の累帯組成構造は、コアでMg濃度が高く、リムに向かいMg濃度が低くなる 。このことから、隠岐片麻岩類はピーク変成作用の後に後退変成作用を被っている。東郷川沿いの試料の変成ピーク時と後退変成時の圧力温度条件は、ザクロ石のコアとリムの組成を用いて推定され、それぞれ718-758℃, 6.4-8.8kbarと508-654℃, 2.1-6.6kbarであった。同様に、銚子川沿いの試料の推定した変成ピーク時と後退変成時の圧力温度条件は、803-829℃, 9.0-10.3kbar と638-695℃, 4.4-5.9kbarであった。したがって、銚子川沿いの試料は、東郷川沿いの試料に比べ、より高温の変成作用を被っている。

東郷川沿いの試料のザクロ石コアに包有されるモナズ石のY2O3濃度は1.7-2.2 wt %であり、1999-2089 MaのCHIME年代を示した。一方、ザクロ石リムに包有されるモナズ石は、1893-2084 Maに加えて約259 Maの年代値が得られ、後者は相対的に低いY2O3濃度を示す。ザクロ石周辺部のモナズ石は、約232-250 Maと162-168 Maが得られ、後者は相対的に高いY2O3濃度を示す。これらの結果は、隠岐片麻岩類は、ペルム-三畳紀の変成作用に加えて、古原生代の高温変成作用(約720-760℃, 6-9 kbar)を被っていることを示しており、隠岐片麻岩類の原岩年代は、従来推定されている古生代初期の年代よりも著しく古いことを示唆する。今後は、隠岐帯における古原生代とペルム-三畳紀変成作用の関連を明らかにして、北中国・南中国地塊、韓国京畿地塊・嶺南地塊の変成作用と比較する。