日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP37] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、座長:針金 由美子(産総研)

14:30 〜 14:45

[SMP37-15] 高圧型変成岩はモデルより高温か?

*石井 和彦1井上 智裕2 (1.大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻、2.大阪府立大学生命環境科学域)

キーワード:高圧変成岩、沈み込み帯、数値モデル、温度圧力条件

高圧型変成岩は、沈み込み帯において形成されたと考えられ、沈み込み帯の温度構造を推定する重要な情報源である。しかし、高圧型変成岩から推定される温度・圧力条件は沈み込み帯の数値モデルから推定されるものより、一般に高温であり、その原因がいろいろ議論されている(Penniston-Dorland et al., 2015など)。Penniston-Dorland et al. (2015)によると、2 GPa以下の圧力でその差が大きく、平均としてモデルの方が100–300℃高温である。また、Penniston-Dorland et al. (2015)によりコンパイルされた変成岩の温度圧力条件は、高速の沈み込み帯に比べ低速の沈み込み帯の方が、高圧・低温になる傾向がある。さらに、変成岩の累進温度圧力履歴には、その傾き(dP/dT)がP/T比と同程度のものとP/T 比より極端に大きい2つのタイプがある。
 本研究では、これらの特徴やモデルとの違いがどのように説明できるのか、数値モデルを用いて検討した。沈み込み帯の熱モデル計算では、海洋プレートの沈み込む速度を境界条件として、マントルウェッジについてのみ流れを計算することが多い(Syracuse et al., 2010など)。その場合、プレート境界を構成する物質(堆積物・蛇紋岩など)の力学的性質の効果が評価できない。本研究では、海洋プレートやプレート境界物質の運動も含めて力学的に計算する数値モデルを用いて、沈み込み帯の温度構造に対するプレート境界物質の力学的性質(流動則・有効摩擦係数など)の効果を検討した。
 このモデルでは、海洋地殻の脱水、マントルウェッジの蛇紋岩化、およびかんらん岩の加水軟化を通して、温度分布と速度場の間にフィードバックが働き、スラブーマントルウェッジ間のカップリング深度が海洋プレート年齢や沈み込み速度によらず70-80 kmでほぼ一定になる。これは高圧型変成岩の最大圧力が2.5 GPa程度であることと調和的である。また、プレート境界の温度分布は、プレート境界物質の力学的性質より変化するが、一般に、浅部(P < 1 GPa)でdP/dTが小さく、深部で大きくなる。これらの計算結果を西アルプス、三波川、ドミニカ共和国などの高圧変成岩から得られる温度圧力条件と比較検討する。