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[SSS08-04] 史料の履歴書:地震史料・火山噴火史料
キーワード:史料批判、史料の履歴書、地震、火山噴火、地震史料集、火山噴火史料集
歴史地震・歴史噴火に関する解説を読むと「史料批判」・「文献批判」等の語句を見ることが多い。しかし、解説者の書いた研究報告・論文を読んでもこの批判作業に関する具体的記述がない。論文を投稿した際にも、この批判作業を要求されることがある。しかし、具体的なコメントはない。戸惑うことが多く、この分野に関する研究を志す地震・火山噴火の研究者にとってこれら解説が壁になることがある。また、歴史地震・歴史噴火史料集には膨大な数の史料が掲載されているが、書かれている内容が似た史料を見ることがある。どの史料が元史料なのかを示す情報は記述されていない。史料を所蔵する博物館等が示されて入る場合でも、史料の書かれた場所が遠く離れていることもある。服部・中西(2017、2018、投稿中)は、東京大学地震研究所図書室に所蔵されている『宝永四年不二山焼 嘉永七安政二年地震記』に収録されている元禄地震・宝永地震・宝永富士山噴火・安政元年伊賀上野地震に関する4史料を用いて、『増訂大日本地震史料』・『新収日本地震史料』に掲載されている地震・火山噴火史料(翻刻文)の元史料に遡る作業を行った。本講演では、これらに加えて加納(2017)と弘瀬・中西(2015)で使用した史料に対しても同様の作業を行った結果を示す。この作業で得られた結果を図示(可視化)することにより、地震・火山噴火史料集に掲載された個々の史料の転載・翻刻・書写・原本作成の歴史を一覧することが可能になり、どの史料を用いるのが良いかの判断が容易になる。本講演ではこの図を「史料の履歴書」と呼ぶことにする。「史料の履歴書」の1例として服部・中西(2018)のFig.2に示した。史料の信頼性には触れず客観的な史料の歴史を図示する。史料原本を用いることが理想であるが、行方不明の場合でも時間的に史料原本に近い史料を用いることにより、書写の過程で生じる誤写・追加・潤色の少ない史料の選択が可能になる。地震・火山噴火史料集が改訂されることが望まれるが、現状の史料集の個々の史料に対して「履歴書」が示されることにより、史料の選択が容易になる。さらに、将来史料集が改訂される場合にも、「履歴書」は改訂のための基礎データになる。