09:00 〜 09:15
[SSS08-07] 2016年熊本地震に伴う微小変位地点における古地震調査
★招待講演
キーワード:2016年熊本地震、活断層、トレンチ調査、テフラ、阿蘇火山
2016年熊本地震に伴い主断層である布田川断層から大きく離れた地点における地表変位がInSARにより検出された(Fujiwara et al., 2016).現地では,それらInSARの検出箇所において,微小ながらも変位が多くの地点で確認された(Kumahara et al., 2016;Goto et al., 2017など).一部は既存の活断層線に一致しており,断層活動に伴う誘発的なすべりも断層変位地形の形成に寄与している可能性を示唆している.また,カルデラ内では,液状化や陥没を伴う地盤変状が確認され,その要因については現在も議論されている(Tsuji et al., 2017; Fujiwara et al., 2017など)。ただし,このような微小変位の多くの実態は解明されておらず,その繰り返しの有無や地下構造に関する情報は乏しい.そこで,本発表では,阿蘇カルデラ北東部に位置する阿蘇市宮地に出現した微小変位上でトレンチ調査を行った結果を報告する.ちなみに本地点は,地表地震断層が現れた布田川断層の東端から約10 km離れた地点である.
阿蘇市宮地周辺で認められた微小変位は,石村ほか(印刷中)で詳細が記載されている.InSARの不連続位置に微小変位(上下変位10 cm未満,右横ずれ5 cm 未満)が認められ,そのトレースは2条に分けられた.なおこのトレース上に累積性を示す断層変位地形は認められない.トレンチサイトは北側トレースの北東端である.トレンチサイト周辺では,さらに2条のトレースに細分でき,それら2条のトレースに挟まれた部分が落ち込む地溝状の変形が生じている.トレンチ掘削は,それらのうち5 cmの上下変位,3 cmの右横ずれが認められた北側のトレースで行った.トレンチの大きさは長さ10 m,幅5 m,深さ3 mであった.トレンチ下部では,杵島岳スコリア(KsS)(4.0 ka:Miyabuchi,2009)を多量に含む水流によって運搬された堆積物が分布する.その上位に,往生岳スコリア(OjS)(3.6 ka:Miyabuchi,2009)から中岳N2スコリア(N2S)(1.5 ka:Miyabuchi,2009)までのテフラと土壌が連続的に堆積している.
2016年熊本地震時に活動した断層は,地震後に改変された耕作土の下面まで変形させており,その上下変形量は10-15 cmであった.この値は,石村ほか(印刷中)によるピット掘削結果と同様である.一方,OjSの上面・下面は25-35 cm上下変位しており,明らかな変位の累積性が読み取れた.壁面での断層観察結果から,2016年の1回前の活動はOjSとN2Sの間に推定され,その年代は1.5-3.6 kaとなる.より古い断層活動はトレンチ壁面では確認できなかった.
本トレンチで認められた1回前の活動時期は,カルデラ内の遺跡に記録されている亀裂の時期(熊本県教育委員会,2010),布田川断層沿いの活動履歴(高橋ほか,2017),日奈久断層帯の活動履歴(岡村ほか,2017)などと一致する.このことは本研究地点の1回前の活動も,2016年同様に布田川断層の活動を受けて生じたと考えられ,約2000年前に2016年熊本地震と同様の地震が生じたことが示唆される.また,本トレンチで認められた断層活動の1回変位量と活動間隔からその変位速度は0.1 mm/yr未満となり,C級の活断層となる.一方,活動間隔は2000年であるため,小単位変位量かつ高頻度という従来のC級活断層像とは異なる特徴を示す.また布田川断層の地震活動と関係する可能性が高く,起震断層としては扱えない可能性があり,国内のC級活断層を評価する上で本地点の知見は重要だと考えられる.
阿蘇市宮地周辺で認められた微小変位は,石村ほか(印刷中)で詳細が記載されている.InSARの不連続位置に微小変位(上下変位10 cm未満,右横ずれ5 cm 未満)が認められ,そのトレースは2条に分けられた.なおこのトレース上に累積性を示す断層変位地形は認められない.トレンチサイトは北側トレースの北東端である.トレンチサイト周辺では,さらに2条のトレースに細分でき,それら2条のトレースに挟まれた部分が落ち込む地溝状の変形が生じている.トレンチ掘削は,それらのうち5 cmの上下変位,3 cmの右横ずれが認められた北側のトレースで行った.トレンチの大きさは長さ10 m,幅5 m,深さ3 mであった.トレンチ下部では,杵島岳スコリア(KsS)(4.0 ka:Miyabuchi,2009)を多量に含む水流によって運搬された堆積物が分布する.その上位に,往生岳スコリア(OjS)(3.6 ka:Miyabuchi,2009)から中岳N2スコリア(N2S)(1.5 ka:Miyabuchi,2009)までのテフラと土壌が連続的に堆積している.
2016年熊本地震時に活動した断層は,地震後に改変された耕作土の下面まで変形させており,その上下変形量は10-15 cmであった.この値は,石村ほか(印刷中)によるピット掘削結果と同様である.一方,OjSの上面・下面は25-35 cm上下変位しており,明らかな変位の累積性が読み取れた.壁面での断層観察結果から,2016年の1回前の活動はOjSとN2Sの間に推定され,その年代は1.5-3.6 kaとなる.より古い断層活動はトレンチ壁面では確認できなかった.
本トレンチで認められた1回前の活動時期は,カルデラ内の遺跡に記録されている亀裂の時期(熊本県教育委員会,2010),布田川断層沿いの活動履歴(高橋ほか,2017),日奈久断層帯の活動履歴(岡村ほか,2017)などと一致する.このことは本研究地点の1回前の活動も,2016年同様に布田川断層の活動を受けて生じたと考えられ,約2000年前に2016年熊本地震と同様の地震が生じたことが示唆される.また,本トレンチで認められた断層活動の1回変位量と活動間隔からその変位速度は0.1 mm/yr未満となり,C級の活断層となる.一方,活動間隔は2000年であるため,小単位変位量かつ高頻度という従来のC級活断層像とは異なる特徴を示す.また布田川断層の地震活動と関係する可能性が高く,起震断層としては扱えない可能性があり,国内のC級活断層を評価する上で本地点の知見は重要だと考えられる.