日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 10:45 〜 12:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、座長:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、Azuma Takashi

11:45 〜 12:00

[SSS08-16] 糸魚川-静岡構造線活断層系神城断層の北部におけるP波反射法地震探査

*木村 治夫1青柳 恭平1秋永 康彦2末廣 匡基2 (1.一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所、2.株式会社 阪神コンサルタンツ)

キーワード:糸魚川-静岡構造線活断層系、神城断層、活断層、2014年長野県北部の地震、反射法地震探査、地下構造

本研究では2014年長野県北部の地震(Mw = 6.2)の震源断層であると考えられている糸魚川-静岡構造線活断層系神城断層について,地震前に認定されていた活断層トレース(澤ほか, 1999; 鈴木ほか, 2010)と地震時に出現した地表地震断層( Okada et al., 2015; 勝部ほか, 2017)の,またさらには主断層とバックスラスト(上田ほか, 2016)の,地下での形状・位置関係を明らかにする目的でP波反射法地震探査を実施した.結果断面に対して地質学的解釈を行い,短縮変形によって生じたと考えられる褶曲構造と,神城断層およびその分岐断層・副断層群の地下構造を得た.

 糸魚川-静岡構造線活断層系は本州の中央部を南北に横断する全長約 160 km の活断層系であり(例えば,地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2015),神城断層は糸魚川-静岡構造線活断層系の最北部に位置している.2014年長野県北部の地震の際には,神城断層の地表トレースの一部に沿って総延長 10 km 程度に及ぶ地表地震断層が出現した( Okada et al., 2015; 勝部ほか, 2017).2014年地震の震源断層は,余震分布と本震の発震機構から,南北約 20 km に延びる東傾斜の逆断層と推定され,神城断層の一部分(北部区間)とその北方延長が活動したと考えられている(地震調査研究推進本部地震調査委員会, 2014).

 本探査は長野県北安曇郡白馬村のJR大糸線信濃森上駅付近から同村野平地区の東方へ至る約 3 km の測線で実施した.探査測線は,北北東-南南西走向である神城断層とほぼ直交するように設定した.データ取得は共通中間点重合法(例えば,物理探査学会, 1998)によって行った.発震は中型バイブレーター震源(米国 IVI 社製の Enviro Vibe )で行い,標準発震点間隔は 5 m である.標準受振点間隔は 10 m として,震源の東方 120 ch 以上と西方 20 ch 以上を同時収録した.データ記録は独立型レコーダー(米国 Geospace 社製の GSX )を用いて,サンプリング間隔 1 ms で行った.

 一般的な共通反射点重合法によるデータ処理の結果,マイグレーション深度変換断面を得て,深度 1.5 km 程度までの地下構造をイメージングすることができた.以下で断面の特徴を概説すると,断面西端周辺の断層下盤では連続性が良く水平な反射面が卓越している.それに対して,断面中部・東部の断層上盤では比較的連続性は悪くなるものの,波打った反射面や傾斜した反射面が多く見られ,逆断層上盤の褶曲変形構造を示しているものと考えられる.

 結果断面における水平な反射面分布域と褶曲分布域の境界部の地表位置は,活断層地表トレース(澤ほか, 1999; 鈴木ほか, 2010)にほぼ相当する.また,2014年地震時の地表地震断層(Okada et al., 2015; 勝部ほか, 2017)は主断層・バックスラスト共に,反射断面での褶曲分布域の中に位置するが,断面内で各地表地震断層に相当する場所では反射面の系統的な食い違いや途切れ,傾斜角の変化などが見られた.以上から,地震前から認定されていた活断層トレースも,2014年地震時の地表地震断層も,表層地盤だけの現象では無く地下へも延長しており,反射法探査でも検出できるほどの十分な累積変位が生じている断層と言える.中でもとくに,2014年地震時には地表変位が確認されていなかった活断層トレースの方が地表地震断層よりも,地下深部での明瞭な構造境界を成しており,本地域の第四紀のアクティブな短縮変形を担う主要な断層であると推定される.地下では非常に明瞭な活断層トレースに対して,異なる場所で2014年地震時に地表地震断層が生じたことと,2014年地震は地震規模や地表地震断層の変位量が想定より小さかったこと(例えば,鈴木ほか, 2015)との関連性について精査していく必要がある.