[SSS08-P23] 2016年熊本地震時に出現した地表地震断層群の活動履歴:益城町および南阿蘇村におけるトレンチ調査結果(序報)
【はじめに】2016年4月16日に発生した熊本地震(Mw7.0)では、布田川-日奈久断層沿いに地表地震断層群が出現した。この地表地震断層群分布域の南西部、益城町寺迫~下陳地区の平野部では、右横ずれ変位主体のENE-WSW系の断層群と、左横ずれ変位主体のNW-SE系の断層群が認められた。一方、当地表地震断層群北東端の南阿蘇村では、右横ずれ変位主体のENE-WSW系の断層群が雁行状に出現した。これらの断層群の活動履歴ならびに断層挙動とそのメカニズムの解明を目的として、2017年3~5月に益城町において、同年11月より南阿蘇村において、それぞれトレンチ調査を実施した。
【調査結果】
1.益城町におけるトレンチ調査結果
(1)右横ずれ変位主体のENE-WSW系地表地震断層群
当断層群を対象としたトレンチ調査を寺迫地区の2か所で実施した。寺迫第1トレンチでは、礫層・砂層を変位させる高角度の断層群が幅約1mのゾーン(断層帯)で認められた。下位の層準ほど断層帯沿いの上下変位量が大きく、変位の累積が確認された.その直上において、シルト層や腐植土層などの緩やかな傾動や地震時に生じたクラックが観察された。
寺迫第2トレンチ(第1トレンチの西南西約250mの地点)では、砂層・シルト層を挟在する礫層を変位させる高角度の断層が、その上位の礫層などに被覆される構造が観察された。
両トレンチ調査から、少なくとも4回の古地震イベントが認められ、2016年熊本地震の1回前のイベント年代はおよそ2000~1700yrBP、2回前のイベント年代はおよそ6500~4400yrBP、3回前と4回前のイベント年代はおよそ9500~6500yrBPと推定される。
(2)左横ずれ変位主体のNW-SE系地表地震断層群
当断層群を対象としたトレンチ調査を下陳地区で実施した結果、礫層、砂層などを変位させる高角度の断層が観察された。各地層と断層の切断・被覆関係、上下変位量および変形の程度の差から、少なくとも2回の古地震イベントが認められ、それらのイベント年代は、それぞれおよそ9400~4500yrBP、14600~14100yrBPと推定される。
2.南阿蘇村におけるトレンチ調査結果
左雁行状配列を示すENE-WSW系の断層群を対象として、阿蘇ファームランド東方箇所と黒川地区の2か所でトレンチ調査を実施した。
阿蘇ファームランド東方のトレンチでは、ローム層・腐植土層・火山灰層などを変位させる断層群が少なくとも幅約15mのゾーンで認められた。下位の層準ほど、断層沿いの上下変位量が大きく、傾動がより顕著となり、少なくとも4回の古地震イベントが識別された。今後、詳細な年代測定結果による検討を行う必要があるが、現時点のデータから、これらのイベント年代は、それぞれおよそ4000~1400yrBP、 6500~4000yrBP、 7900~6500yrBP、12400~10800yrBPと推定される。
黒川地区のトレンチにおいては、阿蘇ファームランド東方トレンチで認められた層準の一部が観察され、およそ8200~6500yrBPの古地震イベントが認められた。
【考察】現時点のデータから、益城町および南阿蘇村のENE-WSW系の地表地震断層群は、最近の時代において約2000~3000年間隔で活動していると考えられる。特に7900 yrBP 以降の3回の古地震イベントについては、益城町および南阿蘇村の両方の断層群が同時に活動している可能性があり、2016年熊本地震と同様な規模の地震が繰り返し発生してきたことが示唆される。一方、益城町の左横ずれ変位主体のNW-SE系の断層群は、右横ずれ変位主体のENE-WSW系断層群に比べて活動間隔が長い可能性がある。このような断層挙動は、Riedel shearに相当するENE-WSW系断層群の変位に伴い、それらのステップ部に生じる歪を解消するためantithetic Riedel shearに相当するNW-SE系断層群が変位するモデルに整合的と考えられる。
【謝辞】本研究は、電力受託研究「破砕部性状等による断層の活動性評価手法の高精度化に関する研究」によって行われた成果の一部である。土木学会原子力土木委員会断層活動性評価の高度化小委員会(金折裕司委員長)の皆様には、現地にてご指導いただきました。現地調査におきましては益城町教育委員会の坂本文隆様、堤英介様、南阿蘇村復興推進課の堤正治様、下田充宏様をはじめ多くの皆様にご協力いただきました。
【調査結果】
1.益城町におけるトレンチ調査結果
(1)右横ずれ変位主体のENE-WSW系地表地震断層群
当断層群を対象としたトレンチ調査を寺迫地区の2か所で実施した。寺迫第1トレンチでは、礫層・砂層を変位させる高角度の断層群が幅約1mのゾーン(断層帯)で認められた。下位の層準ほど断層帯沿いの上下変位量が大きく、変位の累積が確認された.その直上において、シルト層や腐植土層などの緩やかな傾動や地震時に生じたクラックが観察された。
寺迫第2トレンチ(第1トレンチの西南西約250mの地点)では、砂層・シルト層を挟在する礫層を変位させる高角度の断層が、その上位の礫層などに被覆される構造が観察された。
両トレンチ調査から、少なくとも4回の古地震イベントが認められ、2016年熊本地震の1回前のイベント年代はおよそ2000~1700yrBP、2回前のイベント年代はおよそ6500~4400yrBP、3回前と4回前のイベント年代はおよそ9500~6500yrBPと推定される。
(2)左横ずれ変位主体のNW-SE系地表地震断層群
当断層群を対象としたトレンチ調査を下陳地区で実施した結果、礫層、砂層などを変位させる高角度の断層が観察された。各地層と断層の切断・被覆関係、上下変位量および変形の程度の差から、少なくとも2回の古地震イベントが認められ、それらのイベント年代は、それぞれおよそ9400~4500yrBP、14600~14100yrBPと推定される。
2.南阿蘇村におけるトレンチ調査結果
左雁行状配列を示すENE-WSW系の断層群を対象として、阿蘇ファームランド東方箇所と黒川地区の2か所でトレンチ調査を実施した。
阿蘇ファームランド東方のトレンチでは、ローム層・腐植土層・火山灰層などを変位させる断層群が少なくとも幅約15mのゾーンで認められた。下位の層準ほど、断層沿いの上下変位量が大きく、傾動がより顕著となり、少なくとも4回の古地震イベントが識別された。今後、詳細な年代測定結果による検討を行う必要があるが、現時点のデータから、これらのイベント年代は、それぞれおよそ4000~1400yrBP、 6500~4000yrBP、 7900~6500yrBP、12400~10800yrBPと推定される。
黒川地区のトレンチにおいては、阿蘇ファームランド東方トレンチで認められた層準の一部が観察され、およそ8200~6500yrBPの古地震イベントが認められた。
【考察】現時点のデータから、益城町および南阿蘇村のENE-WSW系の地表地震断層群は、最近の時代において約2000~3000年間隔で活動していると考えられる。特に7900 yrBP 以降の3回の古地震イベントについては、益城町および南阿蘇村の両方の断層群が同時に活動している可能性があり、2016年熊本地震と同様な規模の地震が繰り返し発生してきたことが示唆される。一方、益城町の左横ずれ変位主体のNW-SE系の断層群は、右横ずれ変位主体のENE-WSW系断層群に比べて活動間隔が長い可能性がある。このような断層挙動は、Riedel shearに相当するENE-WSW系断層群の変位に伴い、それらのステップ部に生じる歪を解消するためantithetic Riedel shearに相当するNW-SE系断層群が変位するモデルに整合的と考えられる。
【謝辞】本研究は、電力受託研究「破砕部性状等による断層の活動性評価手法の高精度化に関する研究」によって行われた成果の一部である。土木学会原子力土木委員会断層活動性評価の高度化小委員会(金折裕司委員長)の皆様には、現地にてご指導いただきました。現地調査におきましては益城町教育委員会の坂本文隆様、堤英介様、南阿蘇村復興推進課の堤正治様、下田充宏様をはじめ多くの皆様にご協力いただきました。