日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 活断層と古地震

2018年5月22日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所、共同)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)

[SSS08-P32] 地表付近のみで変位を生じた断層破砕帯の特徴:阿寺断層を例として

新實 拓也1、*大谷 具幸1椿 純一1 (1.岐阜大学工学部社会基盤工学科)

キーワード:断層破砕帯、阿寺断層、地表付近

活断層の活動性評価には若い被覆層が必要であり,現状ではそれがなければ評価を行うことができない.そこで,基盤岩の断層破砕帯より活動性を評価する手法の開発が望まれる.その際、地表に露出する活断層破砕帯の最新すべり面では直近の過去にすべりを生じただけではなく、それ以前にもすべりを生じている可能性があり、複数回のすべりにより生じた変化の累積を現在観察していることに留意が必要である。よって、過去にすべりが生じた深度が現在と同じ地表付近であるとは限らず、より深部で同じすべり面で活動した可能性がある。そこで、断層破砕帯が地表付近のみで変位することにより生じる現象を理解するためには、地表付近のみで変位を生じた破砕帯を対象とする必要がある。そのような破砕帯として、岐阜県中津川市付知町田瀬の阿寺断層破砕帯がある。この露頭では阿寺断層は主として下盤側の第四紀砂礫層と上盤側の白亜紀花崗岩の境界として認識される.断層は露頭上部では二条に分岐しており,下側の断層面は砂礫層と花崗岩の境界,上側は花崗岩の内部に位置している.なお、上側の断層面は最上部の一部で砂礫層と接している。遠田ほか(1994)は本露頭で3回の地震イベントを認定しており,上側の断層面は最近の1回または2回のみで活動しているとしている.そこで、この上側の断層面を調査することにより、地表付近のみで変位を生じた断層破砕帯の有する特徴を明らかにすることが本研究の目的である。

この露頭において,断層ガウジ帯とその両側から岩石試料を採取し,岩石薄片観察、粉末X線回折分析と蛍光X線分析を行った.粉末X線回折分析より,バーミキュライトが砂礫層のみに認められ、花崗岩と断層ガウジには含まれない。また、花崗岩と断層ガウジとの間には明瞭な差異は認められないことから、断層ガウジの母岩は花崗岩であるといえる。岩石薄片観察より、断層ガウジでは花崗岩と比べて石英と黒雲母の細粒化が破砕により進んでいることが認められる。一方で、両者の間では変質の違いは認められない。また、蛍光X線分析でも、花崗岩と断層ガウジとの間に明瞭な差異は認められなかった。

これらの結果より、地表付近で1回または2回のすべりを生じた断層破砕帯では鉱物粒径の減少は認められるものの、明瞭な変質作用や元素移動は見いだされない。よって、破砕帯内で明瞭な変質作用や元素移動を生じるためにはより多くの回数のすべりが必要か、あるいはより深部でのすべりが必要であると考えられる。