日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS09] 地殻変動

2018年5月20日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、大園 真子(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

[SSS09-P13] ひずみ計による長期的SSE検出能力についての考察

*宮岡 一樹1木村 久夫2甲斐 玲子2 (1.気象研究所、2.気象庁)

キーワード:ひずみ計、長期的スロースリップ、スタッキング法

ボアホール型のひずみ計による,東海地域で発生する長期的ゆっくりすべりの検出能力についての考察をおこなった.その観点は以下の2点による.ひとつは,2013年から2017年の長期的SSEについてのひずみ計データでの解析結果とGNSSデータによる解析結果との比較であり,もうひとつはオフセット調整機構がひずみ計データの長期的な安定性に与える影響についてである.

数年におよぶ長期的SSEは長期的な安定性にすぐれたGNSS観測で捕捉されてきた(水藤・小沢, 2008, Ozawa et al., 2016など).一方,ひずみ計は感度が高く,短期的SSEなどは精度良く観測できるものの,長期的な変動を捉えることは苦手とされていた(Yamamoto et al, 2008).しかしながら,宮岡・木村(2016)は複数のひずみ計データを重ね合わせることによりSN比を向上させ(宮岡・橫田, 2012,Miyaoka et al., 2017),2013年からの長期的SSEを捕捉した.この解析によると,SSEは2013年初め頃から,想定東海地震の震源域の西端で発生し,2016年ないし2017年頃まで続き,すべりの総量は1.8E+19Nm(Mw6.8相当)であった.この結果は,GNSSデータを用いた解析結果と調和的であり,ひずみ計でも長期的SSEを正しく捉えられることを示されたといえる.

ただし,ひずみ計を用いた解析では2015年半ば頃から観測値とすべり分布モデルから計算される理論値との差異が大きくなっていった様子が見られた.東海地域の歪場に擾乱を与えるような事件(大きな地震など)はなかったことから,センサーもしくは観測点近傍の局所的な変動の蓄積などが原因であり,そのひとつとしてオフセット調整機構が考えられる.これは高感度・高分解能を有しながら,かつ広いダイナミックレンジを得るために必要な機能である.考慮すべき運用方法やこれを低減させる試みなどを紹介する.