09:45 〜 10:00
[SSS10-10] 多重散乱の効果を考慮した内部減衰・散乱減衰の3次元構造推定の試み: 西南日本への適用
キーワード:地震波散乱、内部減衰・散乱減衰、3次元不均質構造
1Hz以上の高周波数帯における地震波減衰は、地震波エネルギーの吸収による内部減衰と、地震波散乱による散乱減衰に分類される。地震波の散乱過程ではエネルギーは保存されるため、散乱減衰は地震動の最大振幅のみならず地震動の継続時間にも影響を及ぼす。したがって、内部減衰と散乱減衰の分離推定は、地球内部構造の理解とともに強震動予測においても重要なトピックスのひとつである。本研究では、コーダ波励起に着目した内部減衰と散乱減衰の3次元不均質構造推定手法について検討した。対象地域は西南日本とする。また、本研究における周波数帯は1-2Hzとし、また、等方散乱を仮定した。
Step1として、Eulenfeld and Wegler (2016, GJI)にしたがって、地震ごとに震源振幅・サイト特性・平均的なパス特性(内部減衰と散乱係数)をパラメータとして、観測エンベロープに最もよく一致する合成エンベロープを計算する。この際、合成エンベロープは輻射伝達理論に基づいたモンテカルロシミュレーションを行って計算した。この際、1次元速度構造を与えた。地震ごとに計算された内部減衰と散乱係数の値を見ると、先行研究と同様、九州地方では内部減衰・散乱減衰がともに他の地域より大きいという特徴が明らかであった。
次に、Step2として、Step1で得られた内部減衰と散乱係数の値を3次元空間にマッピングしていくことを考える。ここでは、Step1で得られた内部減衰と散乱係数の値をもとに適当な初期値を定め、Takeuchi (2016, JGR)の定式化による内部減衰と散乱係数のセンシティビティカーネルを用いて初期値を修正していくこととした。Step2では、Step1で合成したエンベロープを観測エンベロープとして使用する。本研究では等方散乱を仮定しているため、合成エンベロープは主要動部分では観測エンベロープと一致しないが、Step1の合成エンベロープを観測エンベロープとして使用することで、主要動部分のもつ情報もあわせて初期値の修正に活用することができる。
得られた内部減衰と散乱係数の分布は、Step1と同様、九州地方で内部・散乱減衰がともに大きいという特徴を持つ。九州地方内の内部減衰は中部より南部のほうが大きいようである。また、浅部の散乱係数の大きい領域は活火山の分布とよく対応している。四国地方では、四国中部の深さ10-50kmにおいて周囲ほり内部減衰と散乱係数がともに小さい領域が見つかった。この特徴は全減衰を推定した先行研究(例えばKita and Matsubara, 2016, JGR)でも見られており、この地域のテクトニクスを考察していく上で興味深い。
本研究では内部減衰と散乱減衰の3次元不均質構造を推定する手法を提案し、西南日本に適用したところ先行研究と調和的な結果が得られた。本研究では等方散乱を仮定しているが、Eulenfeld and Wegler (2016)及びTakeuchi (2016)の定式化はどちらも非等方散乱の場合にも成立することから、非等方散乱を取り込むことが可能である。非等方散乱を取り込むことにより、Step2で観測エンベロープそのものを活用することが可能になり、その結果、推定される構造の解像度がより向上するものと期待される。
謝辞
本研究にあたり、防災科研Hi-netの観測データ、及び気象庁一元化震源を使用しました。また、東京大学地震研究所共同利用プログラムの援助を受けました。記して感謝いたします。
Step1として、Eulenfeld and Wegler (2016, GJI)にしたがって、地震ごとに震源振幅・サイト特性・平均的なパス特性(内部減衰と散乱係数)をパラメータとして、観測エンベロープに最もよく一致する合成エンベロープを計算する。この際、合成エンベロープは輻射伝達理論に基づいたモンテカルロシミュレーションを行って計算した。この際、1次元速度構造を与えた。地震ごとに計算された内部減衰と散乱係数の値を見ると、先行研究と同様、九州地方では内部減衰・散乱減衰がともに他の地域より大きいという特徴が明らかであった。
次に、Step2として、Step1で得られた内部減衰と散乱係数の値を3次元空間にマッピングしていくことを考える。ここでは、Step1で得られた内部減衰と散乱係数の値をもとに適当な初期値を定め、Takeuchi (2016, JGR)の定式化による内部減衰と散乱係数のセンシティビティカーネルを用いて初期値を修正していくこととした。Step2では、Step1で合成したエンベロープを観測エンベロープとして使用する。本研究では等方散乱を仮定しているため、合成エンベロープは主要動部分では観測エンベロープと一致しないが、Step1の合成エンベロープを観測エンベロープとして使用することで、主要動部分のもつ情報もあわせて初期値の修正に活用することができる。
得られた内部減衰と散乱係数の分布は、Step1と同様、九州地方で内部・散乱減衰がともに大きいという特徴を持つ。九州地方内の内部減衰は中部より南部のほうが大きいようである。また、浅部の散乱係数の大きい領域は活火山の分布とよく対応している。四国地方では、四国中部の深さ10-50kmにおいて周囲ほり内部減衰と散乱係数がともに小さい領域が見つかった。この特徴は全減衰を推定した先行研究(例えばKita and Matsubara, 2016, JGR)でも見られており、この地域のテクトニクスを考察していく上で興味深い。
本研究では内部減衰と散乱減衰の3次元不均質構造を推定する手法を提案し、西南日本に適用したところ先行研究と調和的な結果が得られた。本研究では等方散乱を仮定しているが、Eulenfeld and Wegler (2016)及びTakeuchi (2016)の定式化はどちらも非等方散乱の場合にも成立することから、非等方散乱を取り込むことが可能である。非等方散乱を取り込むことにより、Step2で観測エンベロープそのものを活用することが可能になり、その結果、推定される構造の解像度がより向上するものと期待される。
謝辞
本研究にあたり、防災科研Hi-netの観測データ、及び気象庁一元化震源を使用しました。また、東京大学地震研究所共同利用プログラムの援助を受けました。記して感謝いたします。