日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地殻構造

2018年5月24日(木) 10:45 〜 12:15 301A (幕張メッセ国際会議場 3F)

コンビーナ:青柳 恭平(電力中央研究所)、座長:宮町 宏樹(鹿児島大学)

11:30 〜 11:45

[SSS11-09] 日奈久断層帯海域延長部の詳細な断層形状と完新世における活動性

*大上 隆史1阿部 信太郎1上田 圭一2青柳 恭平2向山 建二郎3須田 茂幸4 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2.電力中央研究所、3.川崎地質株式会社、4.株式会社地球科学総合研究所)

キーワード:日奈久断層帯、右横ずれ断層、ステップ、海上ボーリング調査、三次元地震探査

日奈久断層帯は熊本県益城町木山付近から八代海海域にかけて分布する北東−南西の走向を持つ断層帯で,断層の北西側が相対的に沈降する上下成分を伴った右横ずれ断層を主体とする.文部科学省「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」の一環として,八代海(津奈木沖)に分布する日奈久断層帯海域延長部の断層を対象として,断層を挟む2地点における海上ボーリング調査を実施した.海上ボーリングで得られたコア試料について,肉眼観察と放射性炭素年代測定をはじめとする分析に加えて,CTスキャンを実施して堆積物試料の物性の垂直変化を連続的に検討した.また,調査対象海域(1km×2kmの範囲)において超高分解能三次元地震探査を実施した.
海上ボーリングコアの上部10m程度の泥質堆積物をコア観察と年代測定結果にもとづいて解釈すると,10 ka~8 kaの急速な海水準上昇期に形成された内湾堆積物と,それに引き続く8 ka以降の高海面期に形成された内湾~プロデルタ堆積物に対比できる.堆積曲線から推察すると,断層の隆起側および沈降側の両方で,完新世を通じて概ね連続的に堆積が進んだ可能性が高い.高分解能マルチチャンネル音波探査の記録断面を見ると,対象断層を挟んで反射面の上下変位に累積性が認められ,完新世に少なくとも4回の断層イベントが推定される.断層によって上下変位を受ける反射面の年代を2地点の海上ボーリング掘削地点で求めると,その年代値は概ね一致する.また,反射面は堆積相の垂直変化に加えて,CTスキャンによって連続的に捉えられた物性(含水率や密度等)の垂直変化によっても形成されていると判断される.
横ずれ断層と推定される対象断層の形状および構造を把握するため,超高分解能三次元地震探査データから水平スライス断面を作成した.水平スライス断面にもとづいて断層形状を検討すると,対象断層は概ね北東−南西走向を持つが,ボーリング掘削地点付近で約300 m右にステップしている.さらに,右ステップしている領域には東西方向に少なくとも2条の断層が認められ,その間にSagと解釈される「落ち込み」が形成されている.これらの構造は,右横ずれ断層の右ステップ(または右屈曲)が形成した引張場に発達するExtensional duplexとして解釈可能である.上述した断層形状を反映して,ボーリング掘削地点を挟んだ上下変位が他の海域に比して顕著であった可能性が高い.