日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動

2018年5月24日(木) 10:45 〜 12:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)、蓬田 清(北海道大学大学院理学研究院)

10:45 〜 11:00

[SSS12-07] 水平に沈み込むプレート内での浅い大地震:メキシコ、ペルー、そして南海トラフでの可能性

*蓬田 清1 (1.北海道大学・大学院理学研究院・地球惑星科学部門・地球惑星ダイナミクス分野)

キーワード:浅いプレート内地震、水平沈み込みプレート、プレートの曲げ

ある沈み込み帯では何らかの原因で(若いプレートが沈み込みで密度が軽い、あるいはbasalt-ecologite相転移が起こらずプレートが重くならないなど)、通常の斜めの沈み込みではなく、水平に近く沈み込んでいる。2017年に2つの大きなスラブ内地震が発生したメキシコ南部の沈み込み帯はその例である。ここでは沈み込むプレート境界のすぐ下の浅いプレート内で、過去にM7クラスの正断層の大地震が発生している。同じようなほぼ水平に沈み込む異常な場所として、ペルー中央部でのNazcaプレートの沈み込む帯がある。ここではプレート内の浅い正断層地震として過去最大級のMs7.5地震が1970年に発生している。通常の斜めの沈み込み帯では曲がったプレートの下半分では圧縮応力場となっているために、スラブ上面では正断層の地震の可能性があっても、巨大な地震とはなり得ないという理由であろう。

ほぼ水平に沈み込むプレートの例として、もう一つ著名なのは四国沖の南海トラフである。この沈み込み帯ではスラブがねじ曲がっている箇所で、横ずれ成分が卓越する芸予地震(1905年と2001年)が発生している。しかし、メキシコ南部やペルー中央部のような海溝軸より少し内陸に入った浅い正断層の地震は知られていない。上記2地域、とりわけペルー中央部ではスラブ内地震は稀であることから、プレート形状などが類似の四国沖の南海トラフで近い将来、このような浅いスラブ内の正断層の大きな地震が発生する可能性は否定できない。メキシコやペルーでの地震活動や近年詳細に研究され始めたスロースリップや非火山性微動の空間分布などから、南海トラフでのスラブ内正断層地震の発生様式を推定することができると考える。