日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 地震活動

2018年5月24日(木) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

[SSS12-P01] 小笠原地域の地震火山活動ーOBSを用いた西之島の地震観測ー

*花村 憲享1中田 健嗣2馬塲 久紀1木村 一洋3長岡 優2 (1.東海大学大学院海洋学研究科海洋学専攻、2.気象庁気象研究所、3.気象庁地震火山部)

キーワード:西之島、小笠原、火山、地震

小笠原諸島父島西方に位置する西之島は,1973年に有史以来始めて噴火し,1974年には噴火活動が終息した.2013 年11 月西之島の南方沖で39 年ぶりに噴火活動が再開し新島(小野ほか,2015)が形成され,後に西之島旧島(小坂,1991)と連なった.この噴火に伴い,気象庁気象研究所は,西之島の火山噴火活動に伴う地震の観測と,小笠原周辺海域での震源決定精度向上を目的とした海底地震観測を2015年6月から同年10月の間に実施した.地震観測に使用したOBSは,西之島周辺に5台,小笠原諸島父島周辺に7台設置した.OBS観測によって得られたデータから,中田ほか(2017)は小笠原周辺の震源決定を行い二重深発地震面,上面の深さ60~80 km付近にクラスタを発見した.本研究では,中田ほか(2017)の結果に加え以下の議論を行う.

(1)西之島周辺で決定された震源について
 OBS観測によって,陸上の定常観測点では観られなかった火山性微動が得られた.西之島の震源分布図から,震源の多くは深さ3 km以浅に集中することが明らかとなった.深さ3 km以浅に集中した震源について,深さ1.5 km以浅に集中する震源は水平方向に広く,深さ1.5 km以深に集中する震源は鉛直方向に分布する傾向が観られた.Sano et al. (2016) では深さ3 km~6 kmにマグマ溜まりが存在するとしており,深さ3 km以浅に決定した震源はマグマ溜まり上部で発生したものと考えられる.

(2)西之島で発生した火山性微動のスペクトル分布について
 本研究では浅部に決定した震源(深さ0.6 km)と深部に決定した震源(深さ2.4 km)の比較を行うためにスペクトル解析を行った.両者のスペクトル分布は,1 H前後に卓越周波数を有し,似たスペクトル分布を示したが,小笠原周辺で発生した地震のスペクトル分布と比較したところ違いが観られた.これは,地震と火山性微動の違いによるものと考えられる.また,青木・小坂(1974)で行われたスペクトル解析の結果と照らし合わせると,低周波数帯に卓越周波数を有するという似た特徴を示した. 本観測で得られた火山性微動の波形を解析した西之島のスペクトル分布は,特に青木・小坂(1974)の観測点1のスペクトル分布に似ていた.本研究における西之島のスペクトル分布が青木・小坂(1974)の観測点1のスペクトル分布に似ている理由として,OBSが振動源から離れた位置に存在し,短波長成分が減衰したためと考えられる.

(3)小笠原周辺の地震波形に観られる変換波について
 小笠原周辺の地震波形には,地層境界面で発生したと考えられる多数の変換波がP波とS波の間観られた.そこで,震源決定に使用したTakahashi et al. (2009) の速度構造(小笠原)から導き出した変換波到達時間理論値と実際に変換波が到達した時間の比較を行ったところ,第1層の変換波到達時間に大きな違いが観られた.しかし,本研究では堆積層補正により堆積層の影響を取り除いているため,震源決定に影響はないと考えられる.

(4)小笠原周辺で発生した火山性微動のスペクトル分布について
 本研究では,太平洋プレートモデルに沿う震源,二重深発地震面の震源,プレート上に集中する震源についてスペクトル解析を行った.これらのスペクトルは,10 Hz周辺に卓越周波数を有することが明らかとなった.スペクトル分布を比較すると,近いスペクトル分布を示したが,振幅レベルに違いが観られた.笠谷・筧(2014)は,高周波地震の振幅について,震源の深さが影響することを示唆している.このことから,小笠原地域においても,震源の深さが振幅レベルに影響していると考えられる.

 以上のことから,OBS観測によって陸上の定常観測点では観られなかった小笠原諸島父島周辺域の地震活動,西之島の火山活動を詳細に把握することができた.小笠原周辺においては,本観測によって二重深発地震面の存在が初めて明らかとなった.西之島周辺においては活発な火山活動に伴う火山性微動が多く観られた.