日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 強震動・地震災害

2018年5月21日(月) 09:00 〜 10:30 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、座長:内藤 昌平横田 崇

09:30 〜 09:45

[SSS14-03] 1923年関東地震による木造家屋全潰率の再点検

*横田 崇1,2岩村 公太2加川 一輝2甲斐田 康弘3松末 和之3白井 克弘3 (1.愛知工業大学、2.内閣府、3.応用地質(株))

キーワード:関東地震、木造家屋全潰率、被災建物、震度推定

1923年関東地震(1923/9/1, MJ8.1)では,首都圏を中心とした広い範囲において,木造家屋の建物被害が発生した.
 関東地震発災直後,震災予防調査会(1925)や商工省地質調査所(1925),内務省社会局(1926),地方自治体などによる建物被害調査が行われており,これらのデータは,関東地震による甚大な被害を伝える重要な資料となっている.
 近年,これらの被害報告を調査し,関東地震の地震動強さの推定をする研究が報告されている.諸井・武村(2002)では,主として,震災予防調査会(1925)のデータを利用し,木造家屋の全潰率と半潰率を推定し,関東地震の震度分布を推定している(図1).また,翠川らの研究によれば(2001a, 2001b, 2003, 2004, 2005),神奈川県の建物被害について,神奈川県農会報(1925)や神奈川県震災誌(1927),横浜市震災誌(1926)などの,各市町村における震災誌に基づき,市町村の字単位における木造家屋全潰率を推算している.両者の木造家屋全潰率を比較すると,全体的には整合しているものの,やや異なる地域が幾つか認められた.そこで,両者の参照した資料等を含め改めて比較してみると,火災や流出,埋没などが多い地域について木造家屋全潰率が異なっていることが確認できた.そこで,このことに留意しながら、両者による木造家屋全潰率をコンパイルすることとした。その際、地区町村毎に集計されたデータも住家が多い地点,すなわち,当時の市街地や住宅密集地域における木造家屋全潰率と解釈してポイントデータで示すこととした(図2).
 木造家屋全潰率の被害率曲線の検討を行っている宮腰ら(2000)は,1952年十勝沖地震以前の被害地震の,墓石転倒震度と木造家屋全潰率の被害率曲線の横軸を,墓石転倒震度から最大加速度に換算した被害率曲線を示している.本検討でも,同様の手順で横軸を最大加速度に換算し,更に,藤本・翠川(2005)により,最大加速度を計測震度へ換算した.なお,墓石転倒震度から最大加速度、さらに計測震度に換算する際に誤差が大きくなっているため、被害率曲線は誤差の幅を考慮してプロットした.これと、1995年兵庫県南部地震時の計測震度を指標とした木造建物の被害率曲線とを比較すると、山口・山崎(2000)の被害率曲線(建築年~1951年)との対応が良いと思われた(図3)。ここでは、震度を推定するための被害率曲線に,山口・山崎(2000)を用いることとした。本検討により推定された関東地震の震度分布(図4)は,諸井・武村(2002)の震度分布(図1,および,図2)に比べ,震度7や6強のエリアが,やや少なくなる.とりわけ,諸井・武村(2002)では,埼玉県東部は,震度7や6強となっていたが,本検討では,震度6弱から5強程度となった.これらは,被害率曲線の見直しに加え,震度分布をポイントで示すことによって,平野部に引っ張られて山間部を高震度で示すことを避けたことによる.
 講演では,本検討による震度分布から推定する1923関東地震の震源像についても言及する予定である.