10:00 〜 10:15
[SSS14-05] 益城町市街地における地震断層と建物被害集中
キーワード:地震断層、活断層、建物被害、2016年熊本地震
1 研究目的
直下型地震の被害軽減を図る上で、(1)地震断層直上における断層運動による直接的被害と、(2)地震断層近傍における強震動による被害、ならびに(3)誘発された地盤変状による被害をできるだけ正確に定量化することが重要である。また(2)の強震動についてはその成因の解明も望まれる。
2016年熊本地震においては、益城町市街地なので、地震断層そのものの認定が必ずしも容易でなかったため、(1)と(3)の峻別が行われないままに議論される傾向にあった。また、(2)の成因については、益城町市街地における本震の観測記録は地盤効果により説明できるとして、地震断層運動ではなく地盤効果によると結論づけられたが、その後、本震記録に不正が発覚したため、地盤効果説の根拠は揺らいでいる。
本研究は、益城町市街地内の地震断層を詳細に認定し、地震直上および近傍における建物被害集中を定量的に分析することを目的とする。
なお、熊本地震の地震断層全域における(1)(2)(3)の関係には地域差がある。(1)(地震断層)は明瞭であるが、(2)(強震動)や(3)(地盤変状)を伴わなかった場所や、(1)(地震断層)は比較的小規模ながら、(2)(強震動)が顕著な場所もあった。そのため、地震断層と強震動の関係や、地震断層による直接被害の大小は慎重に整理される必要がある。
2 研究方法
益城町市街地の地震断層を変動地形学的手法により認定した。すなわち、(1)変動地形との整合性、(2)亀裂やドラッグを伴う変状の系統性、(3)重力性変形との区別、等が主な観点である。
建物被害については、2016年4月15日と17日に国土地理院により撮影された航空写真を拡大し、実体視を行って大破と全壊を区分した。門馬ほか(2016)などにおいても同様の手法による判別結果が公表されているため、その結果とも照合した。その上で、大破と全壊の建物分布をGIS上で分析し、定量的な解析を行った。
3 結果
地震断層の分布:
(1) 益城町堂園~市街地まで右横ずれの地震断層の長さは5kmを超える。
(2) 益城町寺迫では地震断層は2条、木山・宮園では3条に分岐する。
(3) 複数条の合計変位量は50~70cmで安定している。
活構造との関係:
(4) 益城町市街地内にはGoto et al., 2017が指摘する撓曲が存在し、地震断層はその基部および頂部にあたる。
(5) 段丘面上に右横ずれ谷の累積変位がみられ、その量は中央トレースでM面上100m、南部トレースでL1面上60mに達する(仮に真の横ずれ量なら合計平均変位速度1.8mm/年以上の可能性もある)。
建物被害:
(6)地震断層から120m以内に全壊家屋の95%が集中する。
(7)大破以上の家屋率は地震断層に近づくほど増加し、50mで30%、20mでは35%に達する。
(8)地震断層近傍(20m以内)の大破以上のうち22%は 昭和50年以降の建物である。
(9)変位量が10cmを超える地震断層直上の家屋はほとんど大破以上の被害を受けている。
(10) 前震の被害集中は本震に比べて顕著でないが、類似の傾向がある。
4 考察
上記(7)は地震断層から100mの範囲においても断層に近づくほど被害率が高まることを示し、これは地盤条件の違いでは説明できない。変位量が10cmを超えると地震断層直上で被害を免れることはない。上記(9)から、4/14の前震の際にも小規模ながら同様の地震断層が活動した可能性が示唆される。
直下型地震の被害軽減を図る上で、(1)地震断層直上における断層運動による直接的被害と、(2)地震断層近傍における強震動による被害、ならびに(3)誘発された地盤変状による被害をできるだけ正確に定量化することが重要である。また(2)の強震動についてはその成因の解明も望まれる。
2016年熊本地震においては、益城町市街地なので、地震断層そのものの認定が必ずしも容易でなかったため、(1)と(3)の峻別が行われないままに議論される傾向にあった。また、(2)の成因については、益城町市街地における本震の観測記録は地盤効果により説明できるとして、地震断層運動ではなく地盤効果によると結論づけられたが、その後、本震記録に不正が発覚したため、地盤効果説の根拠は揺らいでいる。
本研究は、益城町市街地内の地震断層を詳細に認定し、地震直上および近傍における建物被害集中を定量的に分析することを目的とする。
なお、熊本地震の地震断層全域における(1)(2)(3)の関係には地域差がある。(1)(地震断層)は明瞭であるが、(2)(強震動)や(3)(地盤変状)を伴わなかった場所や、(1)(地震断層)は比較的小規模ながら、(2)(強震動)が顕著な場所もあった。そのため、地震断層と強震動の関係や、地震断層による直接被害の大小は慎重に整理される必要がある。
2 研究方法
益城町市街地の地震断層を変動地形学的手法により認定した。すなわち、(1)変動地形との整合性、(2)亀裂やドラッグを伴う変状の系統性、(3)重力性変形との区別、等が主な観点である。
建物被害については、2016年4月15日と17日に国土地理院により撮影された航空写真を拡大し、実体視を行って大破と全壊を区分した。門馬ほか(2016)などにおいても同様の手法による判別結果が公表されているため、その結果とも照合した。その上で、大破と全壊の建物分布をGIS上で分析し、定量的な解析を行った。
3 結果
地震断層の分布:
(1) 益城町堂園~市街地まで右横ずれの地震断層の長さは5kmを超える。
(2) 益城町寺迫では地震断層は2条、木山・宮園では3条に分岐する。
(3) 複数条の合計変位量は50~70cmで安定している。
活構造との関係:
(4) 益城町市街地内にはGoto et al., 2017が指摘する撓曲が存在し、地震断層はその基部および頂部にあたる。
(5) 段丘面上に右横ずれ谷の累積変位がみられ、その量は中央トレースでM面上100m、南部トレースでL1面上60mに達する(仮に真の横ずれ量なら合計平均変位速度1.8mm/年以上の可能性もある)。
建物被害:
(6)地震断層から120m以内に全壊家屋の95%が集中する。
(7)大破以上の家屋率は地震断層に近づくほど増加し、50mで30%、20mでは35%に達する。
(8)地震断層近傍(20m以内)の大破以上のうち22%は 昭和50年以降の建物である。
(9)変位量が10cmを超える地震断層直上の家屋はほとんど大破以上の被害を受けている。
(10) 前震の被害集中は本震に比べて顕著でないが、類似の傾向がある。
4 考察
上記(7)は地震断層から100mの範囲においても断層に近づくほど被害率が高まることを示し、これは地盤条件の違いでは説明できない。変位量が10cmを超えると地震断層直上で被害を免れることはない。上記(9)から、4/14の前震の際にも小規模ながら同様の地震断層が活動した可能性が示唆される。