日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 強震動・地震災害

2018年5月22日(火) 09:00 〜 10:30 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、座長:植竹 富一中井 健太郎(名古屋大学大学院工学研究科)

09:00 〜 09:15

[SSS14-23] 2016年9月23日三重会合点付近の地震(M6.7)により東京湾岸で観測された長周期地震動

*植竹 富一1 (1.東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 技術開発部)

キーワード:長周期地震動、東京湾岸、サイト増幅、後続波群

2016年9月23日に房総半島南東沖の三重会合点付近でM6.7(Mw6.2)の地震が発生し,関東地方で最大震度1が観測された.この海域では,1953年11月26日に「房総沖地震」(M7.4)が発生した.また,1677年の延宝地震も周辺の海域で発生したM8クラスの地震と考えられている.したがって,この海域で発生した地震による地震動記録の分析は,東京湾岸の長周期地震動を想定する上で重要である.

 この報告では,東京電力ホールディングスが東京湾岸の火力発電所に設置した広帯域速度型強震計で得られた記録の分析結果を報告する.東京湾を挟んで東側に5点,西側に8点の観測点が存在する[千葉県5点(富津,袖ケ浦,姉崎,五井,千葉),神奈川県6点(横須賀,南横浜,横浜,東扇島,川崎,技術開発センター),東京都2点(大井,品川)].観測点の速度センサーは,すべて東京測振VSE355-G3である.震央距離は,東京湾東側の千葉県側で概ね205~210km,東京湾西側は,横須賀(215km)を除き225~235kmである.また,9:14の本震(M6.7)の他に,同日中に発生した0:57の前震(M5.9),14:34の余震,15:13の余震及び19:28の余震(いずれもM5.7)の記録が得られている.

 本震で観測された記録は,長周期の震動が長く継続し,隣接する観測点の波形は,一部の後続波群を除きよく似ている.波形の振幅は,東側の観測点の方が大きく,西側の概ね2倍である.また,東側,西側とも東京湾奥側(北側)の方が振幅が大きい傾向がある.速度応答スペクトルを見ると,いずれの観測点も水平動で周期10秒付近が卓越しており,千葉県側観測点では上下動に6秒付近の卓越も見られる.同じ観測点で得られたM5.9の前震,M5.7の余震の記録を比較すると,多くの地点で本震同様10秒の卓越が見られた.ただし,応答スペクトルの振幅は1~15秒の広い周期帯で1/7~1/5となっている.マグニチュードが1小さいことを考えると振幅的には妥当なレベルである.

 今回の震央よりやや陸寄りに2012年06月06日M6.3(Mw6.2)の地震が発生していることから記録の比較を行った.メカニズムは今回(2016年)の地震が逆断層,2012年の地震が横ずれと異なるが,モーメントマグニチュードは同じMw6.2と評価されている.震央から最も近い千葉観測点で,それぞれの震央距離が205kmと131kmである.距離の差にもかかわらず,千葉での速度振幅は同程度である.ただし,見かけ卓越周期は異なっており2012年の方が短周期が卓越している.2012年の記録の速度応答スペクトルでは,周期10秒の卓越は見られず,短周期側は1秒付近までフラットな形状をしている.2016年のスペクトルは10秒付近が高いピークとなっており,10秒付近は,2012年のスペクトルの2倍程度となっている.短周期側(1~2秒)では1/4で,距離の割に小さくなっている.

 2011年3月12日の長野・新潟県境の地震(M6.7,Mw6.2),2014年11月22日の長野県北部の地震(M6.7,Mw6.3)も同規模の地震であり,東京湾岸に対する距離も同程度であることから比較を行った.なお,両地震とも逆断層タイプの地震である.応答スペクトルで比較すると,2016年の地震は短周期側が小さい傾向があり,1~2秒では内陸の2地震の1/2程度である.一方,周期10秒付近では同程度かそれ以上の値となっている.2016年9月23日の地震は,周期10秒が卓越し,短周期側が少ない地震であった.