09:30 〜 09:45
[SSS14-25] MeSO-netのスペクトル特性-地中地震計による影響の検討-
キーワード:MeSO-net、地中地震計、増幅特性
1. はじめに
関東地方にはMeSO-netによる加速度計が306点という高密度の地震計が展開され、2008年からの記録が蓄積されている。この記録とK-NET及びKiK-netを統合して解析することにより、より詳細な減衰構造を求めることができることが期待される。しかし、MeSO-netは地中約20mに設置されているため、扱いに注意が必要である。
今回、MeSO-netとK-NET及びKiK-net記録を用いた三次元Q値とサイト増幅特性の同時インバージョンを行い地中設置による影響について調べた。
2. MeSO-net記録の応答スペクトルの特徴
地中地震計の場合、地表面からの反射波が含まれるため周期により振動の節ができ、その周期でスペクトルに谷が形成される。2011年~2015年のM4.0~7.5の地震によるMeSO-net記録について観測点毎に平均応答スペクトルを求めたところ、この地中の影響のためと思われる谷が形成されていることが確認できた。
次に、MeSO-net全地点用いて平均応答スペクトルの谷になる一次モード周期To1及び二次モード周期To2を読み取り、防災科学技術研究所J-SHISによるAVS30に基づく理論卓越周期との対応を調べた。谷周期の読み取りには明瞭度合いによりA~Dの4段階のランクに分けて検討を行った。その結果、バラツキは大きいが、読取周期とAVS30に基づく周期と相関がみられることがわかった。
記録に基づく読み取り値と理論卓越周期の相関が見られることから、MeSO-net記録でも地中埋設の影響が出ていると考えられる。
3. 三次元Q値とサイトの同時インバージョンによる検討
MeSO-netの増幅特性と地表での地盤の増幅特性と差異を、三次元減衰構造とサイト増幅の同時インバージョンにより検討した。
全地点のサイト増幅を未知数とすると減衰構造の最表層とのトレードオフが生ずるため、中村・植竹(2002)と同様に理論卓越周期から観測点をグループ化しそれぞれのグループで同じ増幅をもつものと仮定してインバージョンを行った。グループ1~8はK-NET及びKiK-netによるものである。AVS20が1000m/s以上の硬岩地点はグループ1に分類し、増幅率を自由表面の2.0になるように拘束をかけたインバージョンを行った。またグループ8はPS検層データがなく卓越周波数が不明なものである。MeSO-netについてはJ-SHISのAVS30データに基づき卓越周波数2Hz以上をグループ9、それ以下をグループ10とした。
地盤増幅の結果は図1に示すようにMeSO-netは岩盤のグループ1と同程度の結果となった。K-NET及びKiK-netのグループについて対応する卓越周波数の範囲を図1の上に示している。卓越周波数によく対応した結果が得られていることがわかる。すなわち、グループ2は卓越周波数が7.9Hz~12.5Hzの観測点であるが、6Hzから10Hzの短周期にかけて徐々に増幅率が大きくなっている。グループ3と4の卓越周波数は、それぞれ5.0~7.9Hz及び3.1~5.0Hzの観測点であるが、それに対応した周波数帯域で大きめの増幅率が得られている。グループ5,6及び7は、卓越周波数に対応して、より明瞭なピークや大きな増幅率が得られている。
MeSO-netのグループ9及び10については、グループ1とあまり違わない結果が得られたが、低周波数で、両者ともやや大きめである。グループ9とグループ10を比較してみると、グループ10は3~5Hzでグループ9に比べて小さい結果となった。グループ10の観測点の多くがAVS30=200m/s~300m/sにあたる。この場合に深さ20mで地震波が節になる一次モードは、2.5Hz~3.75Hzであり対応する。また、二次モードの周波数は7.5Hz~11.25Hzであり、7Hz~9Hzがグループ9に比べて小さくなっており対応していると考えられる。
4. まとめ
MeSO-netには地中設置のためにスペクトルに谷が形成されていることがわかった。その増幅特性について三次元減衰構造と地盤増幅の同時インバージョンにより調べた。その結果、地中記録の増幅は地表の岩盤サイトに近く地表の地盤の差異による影響に比べて小さいことがわかった。
謝辞:防災科学技術研究所K-NET,KiK-net本研究は文部科学省受託研究「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」の一環として実施されました.
関東地方にはMeSO-netによる加速度計が306点という高密度の地震計が展開され、2008年からの記録が蓄積されている。この記録とK-NET及びKiK-netを統合して解析することにより、より詳細な減衰構造を求めることができることが期待される。しかし、MeSO-netは地中約20mに設置されているため、扱いに注意が必要である。
今回、MeSO-netとK-NET及びKiK-net記録を用いた三次元Q値とサイト増幅特性の同時インバージョンを行い地中設置による影響について調べた。
2. MeSO-net記録の応答スペクトルの特徴
地中地震計の場合、地表面からの反射波が含まれるため周期により振動の節ができ、その周期でスペクトルに谷が形成される。2011年~2015年のM4.0~7.5の地震によるMeSO-net記録について観測点毎に平均応答スペクトルを求めたところ、この地中の影響のためと思われる谷が形成されていることが確認できた。
次に、MeSO-net全地点用いて平均応答スペクトルの谷になる一次モード周期To1及び二次モード周期To2を読み取り、防災科学技術研究所J-SHISによるAVS30に基づく理論卓越周期との対応を調べた。谷周期の読み取りには明瞭度合いによりA~Dの4段階のランクに分けて検討を行った。その結果、バラツキは大きいが、読取周期とAVS30に基づく周期と相関がみられることがわかった。
記録に基づく読み取り値と理論卓越周期の相関が見られることから、MeSO-net記録でも地中埋設の影響が出ていると考えられる。
3. 三次元Q値とサイトの同時インバージョンによる検討
MeSO-netの増幅特性と地表での地盤の増幅特性と差異を、三次元減衰構造とサイト増幅の同時インバージョンにより検討した。
全地点のサイト増幅を未知数とすると減衰構造の最表層とのトレードオフが生ずるため、中村・植竹(2002)と同様に理論卓越周期から観測点をグループ化しそれぞれのグループで同じ増幅をもつものと仮定してインバージョンを行った。グループ1~8はK-NET及びKiK-netによるものである。AVS20が1000m/s以上の硬岩地点はグループ1に分類し、増幅率を自由表面の2.0になるように拘束をかけたインバージョンを行った。またグループ8はPS検層データがなく卓越周波数が不明なものである。MeSO-netについてはJ-SHISのAVS30データに基づき卓越周波数2Hz以上をグループ9、それ以下をグループ10とした。
地盤増幅の結果は図1に示すようにMeSO-netは岩盤のグループ1と同程度の結果となった。K-NET及びKiK-netのグループについて対応する卓越周波数の範囲を図1の上に示している。卓越周波数によく対応した結果が得られていることがわかる。すなわち、グループ2は卓越周波数が7.9Hz~12.5Hzの観測点であるが、6Hzから10Hzの短周期にかけて徐々に増幅率が大きくなっている。グループ3と4の卓越周波数は、それぞれ5.0~7.9Hz及び3.1~5.0Hzの観測点であるが、それに対応した周波数帯域で大きめの増幅率が得られている。グループ5,6及び7は、卓越周波数に対応して、より明瞭なピークや大きな増幅率が得られている。
MeSO-netのグループ9及び10については、グループ1とあまり違わない結果が得られたが、低周波数で、両者ともやや大きめである。グループ9とグループ10を比較してみると、グループ10は3~5Hzでグループ9に比べて小さい結果となった。グループ10の観測点の多くがAVS30=200m/s~300m/sにあたる。この場合に深さ20mで地震波が節になる一次モードは、2.5Hz~3.75Hzであり対応する。また、二次モードの周波数は7.5Hz~11.25Hzであり、7Hz~9Hzがグループ9に比べて小さくなっており対応していると考えられる。
4. まとめ
MeSO-netには地中設置のためにスペクトルに谷が形成されていることがわかった。その増幅特性について三次元減衰構造と地盤増幅の同時インバージョンにより調べた。その結果、地中記録の増幅は地表の岩盤サイトに近く地表の地盤の差異による影響に比べて小さいことがわかった。
謝辞:防災科学技術研究所K-NET,KiK-net本研究は文部科学省受託研究「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」の一環として実施されました.