[SSS14-P38] 近地項・中間項を考慮した修正経験的グリーン関数法の実地震への適用に関する検討
キーワード:強震動シミュレーション、2016年熊本地震、近地項・中間項、フリングステップ
2016年熊本地震本震(Mj7.3)では益城町および西原村において震度7を記録するなど断層極近傍において大きな揺れが記録された.さらに,これらの観測点では1mを超える永久変位と変位の立ち上がりと同時に現れる100cm/sを超える大速度が確認されている(益城町で観測された速度波形は100cm/sを超えるピークを複数含むが,このうち後から到来したものはほぼ変位の立ち上がりに対応する).永久変位は近地項・中間項によりもたらされるが,これらの項が工学的な強震動シミュレーションにおいて考慮される例は少なかった.そこで,著者らは近地項・中間項を考慮した強震動シミュレーション手法として,修正経験的グリーン関数法に近地項・中間項を考慮するための補正法(野津,2006)を適用する方法について検討を行ってきた.この方法は解析解との比較によるverificationが行われ,近地項・中間項を含む強震動シミュレーションに適用可能であることは確認されているが,実地震への適用性が課題として残っていた.そこで,本検討では,本手法を実地震に適用し、それに伴ういくつかの課題について検討を行うこととした.実地震としては2016年熊本地震をとりあげた.まず永久変位に影響を及ぼす断層面内の範囲について,近地項・中間項は遠地項に対して距離減衰が大きいため,断層ごく近傍に対象を限れば地表から数km程度の浅部のみで永久変位を十分に再現できると考えられる.しかし,実際には西原村から北に約6km離れたK-NET大津(KMM005)でも1mを超える永久変位が現れている.西原村の変位を再現するような深さ数km程度までのすべりではKMM005での変位が過小評価となってしまう.KMM005は西原村に比べて断層面から遠くにあることを考えると,KMM005の永久変位に対する断層面の影響範囲は西原村より大きくなる.そこで,本検討ではKMM005にも対応するためより広い領域からの近地項・中間項を考慮し,西原村およびKMM005双方に整合するモデルを構築することを試みる.また,近地項・中間項は0Hz付近の成分のみならず0.2Hz以上の成分も多く含んでおり,後者はサイト特性の影響を強く受けると考えられるため,後者については経験的サイト増幅・位相特性を考慮したシミュレーションを行う.