09:15 〜 09:30
[SSS15-08] 破壊進展の加速・減速イメージング手法の提案とその解像限界の検証
キーワード:震源過程、破壊進展イメージング手法、破壊進展の加速・減速、バックプロジェクション法、高周波地震波
地震時の破壊進展プロセスにおける、破壊フロントの加速・減速現象は、例えば階層的に破壊が成長し始めるタイミング、あるいは断層システムの幾何形状や断層面上の応力・強度不均質に起因するバリアによって破壊進展が妨げられる際に生じ、巨大地震をもたらすようなサブイベント破壊がなぜ発生・成長したのか、あるいはなぜ中途に破壊が停滞したのかを理解する鍵となり得る現象である。理論的な研究や動的なシミュレーションによって、破壊進展時の加速・減速が高周波地震波を励起することが知られている。バックプロジェクション (BP) 法は波形の足し合わせによって、波形インバージョン法のように観測波形を再現することなく、地震波の放出源の時空間分布を推定する手法であり、従来は扱いの難しかった、あるいは高解像度にイメージングするのが困難であった、高周波の放出源を推定することが可能である。ハイブリッドBP (HBP) 法は、観測波形同士の相関を利用するBP法に代わって、観測波形とグリーン関数の相互相関関数を足し合わせることで、地震波の放出源を推定する手法である。グリーン関数に含まれるP波と後続波 (pP、sP波) の相対走時および相対振幅を利用することで、従来のBP法の欠点であった後続波のダミーイメージングを軽減し、逆投影されたイメージに対して深さ方向の解像度を担保できる利点がある。またグリーン関数の導入により、イメージを滑り速度あるいは滑り加速度へ明示的に関係づけることが可能である。BP/HBP法を利用して高周波放射源の時空間分布を推定し、破壊進展時の加速・減速現象とアスペリティ分布や断層形状の不連続性の関係を論じる既往研究では、逆投影イメージを構成するシグナル強度が正規化された正の値のみで表現されており、高周波の放出源が加速を反映しているのか、減速を反映しているのか、明示的でない。また、シグナル強度のもつ物理量は、BP/HBP法の実装方法によって変化するため、イメージのもつ物理的解釈は必ずしも明らかでなく、理論研究に比して、観測から捕捉できる加速・減速現象の知識は乏しい。そこで本研究はHBP法による高周波イメージングを通して破壊進展時の加速・減速現象を抽出する方法を提案し、加速・減速イメージングの解像限界について議論する。
イメージを構成するシグナル強度の物理量を加速度に対応させるため、HBP法における相互相関関数は、速度の観測波形および変位のグリーン関数で構成した。観測波形とグリーン関数にはそれぞれ0.5–2.0 Hzのバンドパスフィルタ処理を行い、相互相関関数を観測点分足し合わせ、震源領域に逆投影した。従来は正規化された正のシグナル強度のみでイメージングしていたHBP法に対して、正負のシグナル強度を逆投影することで、正のシグナル強度が加速、負のシグナル強度が減速を表現することになる。提案した手法を、断層上の異なる幾何配置や、多様な滑り時間関数を仮定した仮想要素震源で構成される合成波形、および実際の観測波形 (2008年中国・四川地震、2015年ネパール・ゴルカ地震、2015年チリ・イラペル地震、2015年アフガニスタン・ヒンドゥクシュ地震) に適用し、HBP法における加速・減速イメージングの解像限界を検証した。要素震源で構成される合成波形を用いた数値実験より、高周波放出源が時空間的に孤立している場合のみ、HBP法によって加速・減速シグナルを満足に抽出できることがわかった。要素震源同士が空間的に近接している場合、あるいは、加速・減速フェーズの放射タイミングが、他方の要素震源と時間的に重なる場合、加速・減速現象を逆投影されたイメージから区別することが困難であることがわかった。実際の地震の適用においても同様の結果が得られ、とくに複雑な破壊進行経路や、サブイベントが存在する場合、高周波の放射源が時空間的に孤立する条件は限定されるため、HBP法による高周波イメージングを通じて、加速・減速シグナルを抽出するのは実践的に困難であることがわかった。
イメージを構成するシグナル強度の物理量を加速度に対応させるため、HBP法における相互相関関数は、速度の観測波形および変位のグリーン関数で構成した。観測波形とグリーン関数にはそれぞれ0.5–2.0 Hzのバンドパスフィルタ処理を行い、相互相関関数を観測点分足し合わせ、震源領域に逆投影した。従来は正規化された正のシグナル強度のみでイメージングしていたHBP法に対して、正負のシグナル強度を逆投影することで、正のシグナル強度が加速、負のシグナル強度が減速を表現することになる。提案した手法を、断層上の異なる幾何配置や、多様な滑り時間関数を仮定した仮想要素震源で構成される合成波形、および実際の観測波形 (2008年中国・四川地震、2015年ネパール・ゴルカ地震、2015年チリ・イラペル地震、2015年アフガニスタン・ヒンドゥクシュ地震) に適用し、HBP法における加速・減速イメージングの解像限界を検証した。要素震源で構成される合成波形を用いた数値実験より、高周波放出源が時空間的に孤立している場合のみ、HBP法によって加速・減速シグナルを満足に抽出できることがわかった。要素震源同士が空間的に近接している場合、あるいは、加速・減速フェーズの放射タイミングが、他方の要素震源と時間的に重なる場合、加速・減速現象を逆投影されたイメージから区別することが困難であることがわかった。実際の地震の適用においても同様の結果が得られ、とくに複雑な破壊進行経路や、サブイベントが存在する場合、高周波の放射源が時空間的に孤立する条件は限定されるため、HBP法による高周波イメージングを通じて、加速・減速シグナルを抽出するのは実践的に困難であることがわかった。