日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2018年5月21日(月) 13:45 〜 15:15 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所、共同)、吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、座長:向吉 秀樹谷川 亘

14:30 〜 14:52

[SSS15-21] 炭質物の熱熟成度を用いた地震時の断層帯の摩擦発熱履歴の検出

★招待講演

*金木 俊也1廣野 哲朗1 (1.大阪大学大学院理学研究科)

キーワード:地震、摩擦発熱、炭質物

地震時のエネルギーの大部分は滑り面の摩擦発熱として消費される.このような摩擦発熱量は,剪断応力や滑り距離といった地震時の滑りパラメータと強い相関を持つため,断層岩中に記録された熱履歴を定量的に評価することは大きな課題の一つである.近年の多角的な室内実験・断層岩解析を通して,炭酸塩鉱物の熱分解や粘土鉱物の脱水などの鉱物における化学反応,岩石-水相互作用による微量元素濃度・Sr同位体比異常といった新たな温度指標が提案されている.
 一方,炭質物は原位置の温度に対してその有機化学的特徴を不可逆的に変化させることから,過去10年以上前より摩擦発熱指標になりうる物質として注目を集めてきた.炭質物に記録された摩擦発熱量は,古くはビトリナイト反射率により,近年は,赤外やラマンなどの分光分析,CHO元素分析,バイオマーカー等により推定されている.これらの指標を用いて推定された最高温度より,地震時の滑り挙動のシミュレーションも実施されている.ただし,炭質物の熱熟成には,地震時の剪断による分子構造変化,昇温速度による速度論的な影響,地震の繰り返しによる重複被熱といった不確定要素が存在する.これらの要素が炭質物温度計にどの程度影響を及ぼすかを理解することは,より正確な温度指標の確立に必要不可欠である.本発表では,従来までの炭質物を用いた断層温度計の研究史を紹介しつつ,新たに解明した剪断・昇温速度の影響について報告する.