日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2018年5月21日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所、共同)、吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)

[SSS15-P02] 四国東部安芸構造線周辺の古地温構造解析

*大久 雅貴1向吉 秀樹1 (1.島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

キーワード:四万十帯、巨大分岐断層、ラマン分析

陸上付加体である四万十帯において,過去のプレート境界断層,巨大分岐断層の陸上露頭が複数報告されている(Ikesawa et al., 2003;Mukoyoshi et al., 2006など),そしてそれらの断層の一部においてシュ―ドタキライトが発見されており,断層活動時の摩擦発熱,変位量などの研究も行われている (Kaneki et al.,2016).これらのうち,巨大分岐断層は断層を境にして上盤と下盤の最高被熱温度に大きな温度差をもつことが知られている.この温度差は,付加体中の地温勾配や巨大分岐断層の傾斜から2.5 km~14 kmほどの累積変位によって生じたと考えられている(Konodo et al., 2005; Mukoyoshi et al., 2006).そのため巨大分岐断層周辺の温度構造を解明することは,付加体のテトクトニクスや海溝型地震のメカニズムの解明を議論するうえで重要であると考える.

四国東部には四万十帯を白亜系の北帯と古第三系の南帯に分ける安芸構造線が分布している.安芸構造線は,先行研究における古地温構造解析及び地質構造解析により巨大分岐断層の陸上露頭であると考えられている(Ohmori et al., 1997).この安芸構造線は東西方向に延び、九州では延岡構造線、四国西部では中筋構造線と呼ばれている(村田ほか 1999).そのため同一系の巨大分岐断層を連続して把握することができ、温度構造の側方異方性を安芸構造線から読み取ることができると考えている.しかしながら安芸構造線やその他の巨大分岐断層に関連した古地温構造解析は,局所的なものに限られている(Hara et al., 2017).また,安芸構造線の位置については研究者によっていくつかの考えが示されており(須鎗ほか 1989;村田ほか 1999など),一部の地域では正確な位置が不明である.また安芸構造線の一部では岩相年代境界と温度構造境界の不一致が報告されている(原ほか 2016).そこで本研究ではラマン分光法を用いた広範囲の古地温構造解析より,温度構造境界としての安芸構造線の位置を特定するとともに,安芸構造線の断層岩の性状を明らかにすることを目的とした.

本研究地域は四国東部高知県安芸市から徳島県牟岐町にかけての範囲である.この地域には四万十帯の北帯と南帯の境界である安芸構造線が分布し,安芸構造線の北側には白亜系の牟岐層や日和佐層,南側には古第三系の奈半利層や大山岬層が分布する.このうち牟岐層および日和佐層は主に泥岩と砂岩勝ち互層から構成され,奈半利層および大山岬層は礫岩,砂岩,砂岩泥岩互層から構成されている(平ほか 1980;君波ほか 1998).

先行研究において安芸構造線の上盤側近傍においては岩石が千枚岩化の弱変成作用を受けていることが報告されている(村田ほか 1999).そのため,その点を考慮しつつ地質調査,サンプリングを行った.ラマン分光法を用いた温度の推定にはKouketsu et al. (2014)によって示された炭質物ラマン温度計を使用した.ラマン分析は,薄片下で炭質物を20~30地点ほど測定し,スペクトル解析結果の平均値の値を求める方法で行った.

調査地域中部の馬路村から調査地域東部の海部町にかけては魚梁瀬ダム南方の久木の沢の上流,竹屋敷北方2 km,久尾の林道,北河内,において安芸構造線と思われる断層露頭を確認した.これらの断層は主に東西走向で北に70°Cほど傾斜している.断層を挟んで上盤側の砂岩及び千枚岩の被熱温度は内陸部では250~290°C,沿岸部では200~220°C,下盤側の砂岩及び泥岩の被熱温度は内陸部では170~200°C,沿岸部では150~160°Cであり,断層を境にして50°C~100°Cほどの温度差が認められた.このほかにも水落,中谷,馬場,馬路村北方でも類似した温度差が確認できている.
 本発表では,本調査地域における古地温構造と,これまでに確認できた断層露頭の産状について紹介する.