日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT48] 合成開口レーダー

2018年5月21日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:森下 遊(国土地理院)、小林 祥子(玉川大学)、木下 陽平(一般財団法人リモート・センシング技術センター、共同)、阿部 隆博(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

[STT48-P12] アジマス方向ビームステアリングの干渉SARへの影響

*奥山 哲1安藤 忍1 (1.気象研究所)

キーワード:SAR、TOPS、スポットライト

干渉SAR解析は、SAR画像の持つ位相情報から地表面の形状や2回の観測間に発生した地表変位を検出する技術である.最も基本的なSAR観測方式はアンテナの進行方向(アジマス方向)に対し90度右ないし左方向にレーダービームを照射するものであり、Stripmapモードと呼ばれる.今日ある干渉SAR解析技術の大半はこのStripmapモードによる観測データを元に発展してきたと言って過言ではない.

近年、レーダービームの照射方向をアジマス方向に変化させる(ビームステアリング)ことにより、取得データの広帯域化や高分解能化を実現する観測方式が実用化され、各種SAR衛星に実装されるようになった.これらの観測方式によるSARデータに対してStripmapモード同様の干渉SAR解析を行う場合、合成開口時間中のレーダービーム照射方向が一定でないことによる位相変化が重畳する結果となる.本発表では、SAR解析ソフトRINC(Ozawa et al., 2016)を用いたSentinel-1 TOPSモードおよびPALSAR-2 Spotlightモードの干渉SAR解析について、この位相変化の補正を試みた結果について報告する.

TOPS(Terrain Observation by Progressive Scans)モードは、レーダービーム照射方向を後方から前方に変化させることにより、短い観測時間で広範囲を観測する方式であり、これによる位相変化は既に定式化されている(Miranda, 2015; Grandin, 2015).しかし、この手法による補正を行った後にもアジマス方向に一次の位相トレンドが残存する結果となった.

一方、SpotlightモードはTOPSモードとは逆に、レーダービーム照射方向を前方から後方に変化させ、特定領域をより長く観測することでアジマス分解能を向上させる観測方式である.これについても適切な位相補正により、ビームステアリングの影響を除去することが可能であったが、やはりアジマス方向に一次の位相トレンドが残存する結果となった.

得られた干渉画像を元にこれらのトレンドを推定し除去することは可能ではあるが、そのためにはある程度の干渉性が確保されている必要があり、全てのケースにおいて適用可能ではない.この残存位相については、今後さらに調査する予定である.

なお、RINC以外のSAR解析ソフトの対応状況を調査するため、GAMMAおよびGMT5SARでの解析を行った.TOPSモードについては両者とも補正可能であり、アジマス方向のトレンドも認められなかった.一方Spotlightモードについては、GAMMAでは本発表同様のアジマス方向のトレンドが残存し、GMT5SARでは補正に対応していなかった.